2023年12月14日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「中国で何が起きているのか」(4) 柴田聡・地域経済活性化支援機構常務取締役

会見メモ

北京の日本大使館での勤務経験を持ち『チャイナ・インパクト』『中国金融の実力と日本の戦略』などの著書がある地域経済活性化支援機構常務取締役で、金融庁研究参事の柴田聡さんが登壇。中国の不動産市場や中国経済の現状と今後の見通しについて話した。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

 

 


会見リポート

先入観なき対中認識を

早川 真 (共同通信社外信部担当部長)

 不調が伝えられる中国経済の先行きをどう見通すか。中国との金融協力交渉など政府の実務に携わってきた柴田氏は、先入観にとらわれない状況認識が大事だと訴えた。中国は不動産不況と地方債務拡大という難題に直面しているものの、政府が適切な政策対応を続ければ中長期的には切り抜けられると予測した。

 日本では中国の「不動産バブル崩壊」に関心が集まる。だが柴田氏は「日本のバブル崩壊をイメージすると違うのではないか」と指摘。東京を含めた全国で地価が急落した日本と違い、北京や上海では大きな問題にはなっていないと話した。中国恒大集団など不動産大手の経営危機が取り沙汰され、各地で契約済みの住宅の工事中断が相次いだものの、購入者に確実に住宅を引き渡す「保交楼」の取り組みが進み、事態は「かなり落ち着いた」と分析した。

 一方、地方政府は第三セクターに似た「地方融資プラットフォーム」による資金調達を拡大し、債務が増加している。柴田氏は、2008年のリーマン・ショック後から続く長期的な問題だと解説。返済期限の延長や大手国有銀行へのリスク移転により時間を稼いで解決するのが中国政府の戦略だと推測した。実際、経済のシステミックリスクは発生していない。柴田氏は中国政府の政策対応能力の高さを評価。消費が振るわない中で今後も確実に経済を支えるためには、生活インフラなどの分野で政府主導の投資を増やすべきだと提言した。また客観的な経済データの公表は不可欠だと注文した。

 振り返れば2015年には、上海株急落や人民元切り下げによる「中国ショック」が金融市場を揺るがした。柴田氏は「いま中国のマクロ経済はそこまで追い込まれていない」と指摘。依然として各種規制が残る中国市場をこじ開けて利益を得るためにも、日本は中国との対話のチャンネルを維持するべきだと訴えた。


ゲスト / Guest

  • 柴田聡 / Satoru SHIBATA

    地域経済活性化支援機構(REVIC) 常務取締役、金融庁研究参事(中国金融)

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:4

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