2024年01月19日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「2024年経済見通し」(4) 酒井才介・みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部主席エコノミスト

会見メモ

マクロ経済分析、経済政策、財政、働き方改革などを専門とする、みずほリサーチ&テクノロジーズ主席エコノミストの酒井才介さんが、賃金・物価の動向とその中で個人消費がどう動くのかなどについて話した。

 

司会 今井純子 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

課題はデフレから人手不足へ移行

堀 義男 (時事通信出身)

 日銀が異次元緩和の見直しに近く踏み切るとの観測が高まる中、酒井氏も4~6月にマイナス金利と長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール)、マネタリーベース拡大方針の「トリプル解除」を見込んだ。ただ、今年後半以降は賃金、物価とも上昇の勢いが徐々に鈍化するため、ゼロ金利が継続されると読む。

 また、名目賃金増加に伴う税・社会保障負担の拡大が、実質可処分所得の減少を通じて個人消費を下押し。経済全体に波及している点にも注意喚起した。

 酒井氏は、日本経済の課題はデフレから2030年に698万人と試算する深刻な人手不足に移ったとも指摘。供給制約からインフレ要因になり得ると懸念した。実効性ある対策の柱として「人への投資」を訴え、中でも経営層とエンジニアリング層の橋渡しを担えるデジタル技術の活用人材育成が重要と説明した。企業努力だけでなく政策的後押しを含め「人への投資が一丁目一番地」と語り、欧米並みの成長率達成に向け官民合わせ年4兆円規模を掲げた。

 人への投資は賃上げ原資ともなる労働生産性向上に中長期的に資すると期待される。酒井氏は「持続的な賃金上昇につながるカギ」と捉え、リスキリング(学び直し)推進のための企業、労働者への補助金や、人的資本開示の義務化・範囲拡大などの具体策を求めた。

 他方、デフレからは脱却した状況下、若年層を中心にインフレヘッジの上でも株式などリスク資産への積極投資を提起した。金融機関側にも金融リテラシー(知識)を高める必要を認めたが、これまで投資家軽視と受け止められる営業姿勢など金融機関側に課題が指摘されてきた。

 新たな少額投資非課税制度(NISA)は今年のハイライトの一つながら、投資促進が賃金・物価や人手不足と並ぶ今年の重要課題かどうか。受け止めは分かれよう。


ゲスト / Guest

  • 酒井才介 / Saisuke SAKAI

    みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部主席エコノミスト / Chief Economist, Mizuho Research & Technologies

研究テーマ:2024年経済見通し

研究会回数:4

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