2023年10月27日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「トルコ 建国100年の自画像」内藤正典・同志社大学大学院教授

会見メモ

10月29日に建国100周年を迎えるトルコ共和国は、世俗主義を国家原則として近代国家の建設を進めてきた。イスラム主義政党出身のエルドアン大統領は、この国の将来をどう考えているのか。現代トルコ、及び中東・イスラム地域研究の一人者、内藤正典・同志社大学大学院教授がトルコの「これまで」と「これから」を解説した。

 

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

ガザ紛争 パレスチナ側で仲介役の構え

原田 健男 (元JNNカイロ支局長・山陽放送出身)

 14世紀から20世紀まで600年余りにわたって続いた巨大なイスラム国家オスマン帝国は、第一次大戦でドイツなど同盟国側について敗戦・解体。その屈辱から立ち上がった新生トルコ共和国が独立してこの10月で100年となった。この間、世俗主義を国家原則として近代国家の建設を進めてきたが、エルドアン大統領登場後はイスラム復興運動を推し進めてきた。

 トルコ研究の第一人者、内藤正典同志社大学大学院教授は、「大統領は各地で公共住宅を建てるなどして人気だ。経済面では年率60%を超えるインフレだが、それでも金利を上げなかった。クレジットカードで多重ローンを抱えている多くの国民を救済するためだ。もっとも通貨のトルコリラの価値がどんどん下がっても国民のほうは金や外貨などを買って自衛することに慣れている」そうだ。トルコでは政府が金(gold)を発行しており、小さな町にも金を1単位(7.45g)・半単位・4分の一単位で交換できるマーケットがあり、国民は皆価値が下がらない金に替えておくのだという。

 エルドアン政権はイスラム教徒には同情的だ。パレスチナのハマスのイスラエル攻撃後もパレスチナ側に立って仲介をする意思を示している。しかしNATO北大西洋条約機構加盟国であるのに、ロシアのウクライナ侵攻後もスウェーデンの加盟に難色を示し、ロシアとは良好な関係を保つなど独自外交を推し進める。

 順調に見えるエルドアン政権だが、国民の間で「権限が強すぎる大統領制」や「議会政治・言論の自由の制限」などに不満も出てきており、今年5月の大統領選選挙では決選投票でようやく野党候補に勝つという接戦だった。EU加盟交渉を通じて進めた経済民主化に続いて、政治の民主化を求める声が高まっているようだ。イスラム復興運動を経てまた西欧化への揺り戻しがあるのだろうか。


ゲスト / Guest

  • 内藤正典 / Masanori NAITO

    同志社大学大学院教授 / Professor, Graduate School of Global Studies Doshisha University

研究テーマ:トルコ 建国100年の自画像

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