2023年12月01日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「ウクライナ」(25) 保坂三四郎・エストニア国際防衛安全保障センター研究員

会見メモ

ソ連・ロシアのインテリジェンス研究の第一人者である保坂三四郎さんが登壇。ソ連時代の国家保安委員会(KGB)がどのようにして事実上生き残ることになり、国家、社会にどう浸透していったのか、防諜機関を中心とするロシアの国家体制を詳説した。

対ウクライナとの戦争について、「ロシアの戦略目標はウクライナを『影響圏』にとどめること。簡単に終わることはない」。ポストプーチンについての質問には「後継者が誰になっても、諜報機関という制度が揺らぐ可能性はあまりないだろう。体制維持のための自己保存のメカニズムを備えている」。

 

保坂さんはエストニア在住で、同国のシンクタンク、国際防衛安全センターの研究員を務めている。

今年6月に『諜報国家ロシア ソ連KGBからプーチンのFSB体制まで』(中央公論新社)を刊行。第32回山本七平賞を受賞した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

ロシア情報機関の深さと弱さ

遠藤 良介 (産経新聞社外信部次長兼論説委員)

 ロシアの秘密警察・情報機関が政治、社会、外交にいかに根を張っているか。保坂氏はこの点を詳細に解き明かし、秘密警察などによる非公然工作の延長線上にウクライナ侵略があることを説明した。

 1991年のソ連崩壊で共産党の一党独裁は崩れたが、国家保安委員会(KGB)は市場経済や言論自由化に適応する巧みな「自己改革」で生き残りを果たした。民主主義陣営にとっては重大な「盲点」だった。

 ソ連時代のKGBは共産党の監督を受けたが、後継機関の連邦保安局(FSB)はプーチン露大統領ほぼ一人の配下で行動する。FSB本体はもとより、行政機関や企業への出向職員、エージェントが「アクティブ・メジャーズ」と呼ばれる非公然工作を担う。ロシアの対外行動では「公式の外交よりも非公然工作が主要な部分を占める」と保坂氏は強調する。工作は文化交流や報道、学術分野でも活発に行われている。

 ウクライナに対しては、欧州連合(EU)接近を阻止する工作が行われ、失敗したために2014年のクリミア併合や東部への軍事介入に出た。次いで東部の傀儡政権を通じたウクライナ統制を試みたが、それも失敗して昨年2月の全面侵攻に至った。

 「ウクライナを『影響圏』にとどめるというロシアの戦略目標は一貫している。この戦争が簡単に終わることはない」と保坂氏。「プーチンの後継者が誰になっても、今の体制・制度が揺らぐ可能性はあまりない。FSBは自己保存のメカニズムを備えている」とも語った。

 展望は明るくないが、保坂氏は独裁国家の情報機関が抱える「弱さ」も挙げた。プーチン氏が聞きたい情報だけを上げてしまうというのが一例だ。全面侵攻に先立ち、FSBは「ウクライナ国民は露軍に抵抗しない。傀儡政権を受け入れるだろう」との甘い見通しを報告していた。決定的な誤算であった。


ゲスト / Guest

  • 保坂三四郎 / Sanshiro HOSAKA

    エストニア国際防衛安全保障センター研究員 / Research Fellow, The International Centre for Defence and Security (ICDS)

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:25

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