会見リポート
2023年09月14日
15:30 〜 16:30
9階会見場
コロナ対策医療専門家有志 会見
会見メモ
3年にわたり新型コロナウイルス対策を検討してきた尾身茂・公益財団法人結核予防会理事長、岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長、武藤香織・東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授が、これまでの専門家としての活動を総括した。
司会 伊藤雅之 日本記者クラブ企画委員(NHK)
会見リポート
「言うべきことを言う責任」
村川 実由紀 (共同通信社科学部)
「この1~2週間ぐらいが感染拡大、抑制できるのかの瀬戸際です」。2020年2月24日、専門家会議のメンバーとして記者会見に臨んだ尾身茂さん。岡部信彦さん、武藤香織さんら多分野のスペシャリストとそれから100本以上の提言を出し、何度もカメラの前で感染症対策の必要性を訴えてきた。政府が新型インフルエンザ等対策推進会議の構成員を刷新したことで意見のまとめ役を〝卒業〟したため、公式な場で話すのは最後になるという。
新型コロナウイルス感染症は無症状の人からも広がる。対策は「これまで経験した中で最も難しいものだった」と振り返る。流行初期はデータが不足していた。流行を繰り返すうちに提言の内容への国民の理解を得られにくくなり、伝わりづらさを感じた。政府ではなく、専門家が全て決めているような印象を持たれたこともあった。誹謗中傷や脅迫も受けた。表に出続けた理由について尾身さんは「100年に1度の危機。感染症対策に直接関わってきた経験を持ったものが、言うべきことを言わないというのは、歴史の審判に耐えられない。当然やるべき仕事だと思っていた」と説く。
流行の「第9波」は続き、この感染症との共存も続く。ウイルスは変異し、後遺症患者も出ている。
岡部さんは対策が行われてきた中で子どもへの配慮が欠けていた側面もあったとし「子どもについてどう考えるのかという課題がまだある」と指摘。武藤さんは「危機が迫ったときに人は容易に人を攻撃する」とし、差別意識の撤廃、人権擁護、女性へ偏りがちなケア現場での負担の軽減といったことについても考えなくてはいけないとする。尾身さんは「感染症に限らず、さまざまな苦難に直面した際に専門家の知見を社会でどう活用するか、私たちの試みが、反省も踏まえて、対策に生かされることを祈念する」と言い添えた。
ゲスト / Guest
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尾身茂 / Shigeru OMI
公益財団法人結核予防会 理事長
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岡部信彦 / Nobuhiko OKABE
川崎市健康安全研究所 所長
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武藤香織 / Kaori MUTO
東京大学医科学研究所公共政策研究分野 教授
研究テーマ:新型コロナウイルス
研究会回数:83