2023年06月13日 14:00 〜 15:00 10階ホール
カンヌ国際映画祭最優秀男優賞受賞 役所広司さん 会見

会見メモ

ヴィム・ヴェンダース監督の映画「PERFECT DAYS」に主演し、第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した役所広司さんと、共演者でダンサーの田中泯さんが登壇。受賞の喜びや作品に込めた思いなどについて語った。

 

司会 中村正子 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

「夢のような仕事だった」

松田 拓也 (読売新聞社文化部)

 「やったことのない映画で、しかもやったことのない役。本当に夢のような仕事でした」。カンヌで日本人が男優賞を受賞するのは是枝裕和監督の「誰も知らない」主演の柳楽優弥さん以来、19年ぶり。国内外で数々の賞に輝きながら、三大映画祭(カンヌ、ベルリン、ベネチア)での男優賞受賞は初となった役所さんは、満面の笑みで喜びを語った。

 映画「パーフェクト・デイズ」は、東京都渋谷区で快適な公共トイレの設置を進めるプロジェクト「THE TOKYO TOILET」から派生した作品。企画段階から参加した役所さんは「これまでの日本映画とは全く違う形。配給も映画会社も何もなかった」と明かした。さらに当初は短編の構想で、監督が独の巨匠、ヴィム・ヴェンダース氏に決まって長編に変容。カンヌにまでたどりついた。

 主人公は古びたアパートに1人で暮らす寡黙なトイレ清掃員・平山。「毎日、仕事をして大衆浴場に行き、軽くお酒を飲みながら食事をして、好きな文庫本を読み、幸せな気分で眠りにつく」という男性で、「お金があれば何でも手に入る世の中ですが、とても美しい人間の生き方のように伝わるのでは」と思いを込めた。セリフのないホームレス役で出演した田中泯さんも「役所さんと、ひょっとしたら同じものを見ているような瞬間もきっとあった。すてきな映画になった」としみじみと語った。

 会見は時折、笑いも起こる和やかな雰囲気で進み、日本映画の今後にも話が及んだ。「映画はビジネスとして成功しなければいけないものですが、そればかり追いかけていては日本映画は痩せていく気がする」と危機感を示した役所さん。「監督の自由な発想で始まり、興行的に成功させなければいけないという制約もなかった今回の映画作りは、とてもいい例になると思う」と力を込めた。


ゲスト / Guest

  • 役所広司 / Koji YAKUSHO

    俳優、カンヌ国際映画祭最優秀男優賞受賞  / the best actor award, Cannes Film Festival

  • 田中泯 / Min TANAKA

    ダンサー

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