2023年04月25日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「多様性社会への課題」(2)LGBTQ関連新法の前提問題~トランスジェンダーの男女別施設の利用を中心に 立石結夏弁護士

会見メモ

主にトランスジェンダーを中心とする性的少数者の権利擁護に携わっている立石結夏弁護士が登壇。「LGBT関連新法の前提問題」と題し、法整備に向けた議論を整理するとともに、トランスジェンダーが直面する施設利用問題についての判例動向などについて話した。

 

司会 伊藤雅之 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

★YouTubeでのアーカイブ配信は行いません。

 


会見リポート

LGBT法 冷静な議論を

藤沢 美由紀 (毎日新聞社くらし科学環境部)

 LGBTなど性的少数者を巡る新法案が議論になる中、トランスジェンダー女性に関するデマが広がっている。当事者の権利擁護に取り組んできた立石弁護士は「新法は新たな権利や義務が創設されるものではない。『差別をしてはならない』ということは、既にある法令や判例で確定している」と明確に指摘。トランスジェンダーの権利保護が女性の安心を脅かすような論調は実情から離れているとして、報道においての留意や冷静な議論を呼びかけた。

 トランスジェンダー女性とは、出生時に割り当てられた性別は男性で、自認する性別が女性の人をいう。昨今、「性自認」という言葉を「『心が女性だ』と言えばトランスジェンダーになれる」という言説と関連付けた解釈があるが、立石弁護士は「性自認」と「性同一性」という言葉が同じ意味であることや、性同一性障害に関する判断基準などを丁寧に示し、誤りであるとした。

 男女別施設を巡る問題については、体の露出の有無など施設の性質や当事者の事情はさまざまであることを説明。LGBT関連新法が制定されると男性の外性器がある者が「女湯に入れるようになる」「女性用トイレに入ってきて不安」といった言説についても、公衆浴場では「身体の特徴に基づく性別ごとのゾーニング」がなされていることや、国内外の判例などでは、今後、自認する性別のトイレの使用を禁止することは極めて難しいことを解説した。その上で、性暴力加害者とトランスジェンダー女性を結びつけた言説が前提としている誤解について、データや実態を基に解きほぐした。

 「トランスジェンダー女性も、(不安をあおられる)女性も、ジェンダー不平等や性被害を放置してきた社会構造の被害者です」。質疑の中で強調した言葉は、分断を牽制するとともに、課題の根源を指摘する重要な問題提起でもあると感じた。

 


ゲスト / Guest

  • 立石結夏 / TATEISHI Yuka

    日本 / Japan

    弁護士 / attorney at law

研究テーマ:多様性社会への課題

研究会回数:2

前へ 2024年03月 次へ
25
26
27
28
29
2
3
4
5
9
10
11
12
16
17
20
23
24
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ