2023年02月04日 15:30 〜 17:00 オンライン開催
「3.11から12年」(1) 福島第一原発にも「廃炉法」を 尾松亮・東洋大学客員研究員

会見メモ

東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から3月11日で12年を迎えるのを前に、シリーズ「3.11から12年」をスタートした。

 

初回のゲストとして、東洋大学客員研究員の尾松亮さんが「福島第一原発にも廃炉法を」をテーマに登壇。日本において事故炉、商用炉ともに廃炉の法的規定がない現状を指摘。特に事故炉である福島第一原発については、チェルノブイリ、スリーマイルなど海外の事例を例示しながら、「廃炉完了状態」の定義、「廃炉プロセス」の規定が必要との考えを示した。

 

司会 坪井ゆづる 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞社)

 


会見リポート

廃炉に法的規制必要

広江 滋規 (共同通信社科学部原子力報道室)

 東京電力福島第1原発事故からまもなく12年。廃炉作業では、溶融核燃料(デブリ)の取り出しなど延期が繰り返されている。廃炉を巡る社会制度に詳しい東洋大客員研究員の尾松亮さんは、廃炉終了時の姿を定め、国や東電に工程を守らせるため「廃炉法」の整備が必要だと提案している。

 国内の商業原発は第1原発6基を含め24基の廃炉が決定している。電力会社は、廃止措置計画を原子力規制委員会に提出し、一般的に30~40年で使用済み核燃料の運び出しや放射性物質の除染、設備の解体などを進める。だがどこまで除染したら跡地を利用できるかといった明確な基準はない。尾松さんは「廃炉完了がどんな状態なのか法的に曖昧なままだ」と指摘する。

 廃炉が先行する米国ではどうか。跡地を解放するには公衆の追加被ばく線量が年間0・25ミリシーベルト以下になるまで除染する規定はあるが、完全に更地にするのは難しいのが現実。約20年前に廃炉が完了した東部メイン州のある原発では、フェンスに囲まれた敷地に使用済み核燃料の乾式貯蔵施設が残る。尾松さんは「日本もこういう状態を押しつけられる地域が増えるのではないか。法規制を求めて議論しないと次の世代に大きなツケを残す」と警鐘を鳴らす。

 政府と東電は第1原発については、廃炉完了の目標を2041~51年とするが、最後の姿をどのような状態にするかは未確定だ。日本原子力学会は20年、デブリ取り出し直後から構内の全施設撤去を始める案、放射線量低下を待って施設を取り壊す案、汚染度が高い原子炉などを一部残存させて計器類で監視を続ける案などを例示したが、議論はまだ広がっていない。

 尾松さんは「地域住民や地域を離れざるを得なかった住民にも将来どんな状態にしてほしいと願っているか聞いて、法的な規定に反映させる仕組みが必要だ」と話した。


ゲスト / Guest

  • 尾松亮 / Ryo OMATSU

    東洋大学客員研究員

研究テーマ:3.11から12年

研究会回数:1

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