2023年02月17日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「3.11から12年」(4) 伝承・教訓の視点で見つめなおす 佐藤翔輔・東北大学准教授

会見メモ

東北大学災害科学国際研究所准教授の佐藤翔輔さんは、東日本大震災の発災当時から被災地に入り、現場と連携して、実証研究と技術支援の両面から、効果的な災害伝承や防災対策を研究してきた。

佐藤さんが、この間の調査データから見えてきたこと、意外な教訓など、調査、支援、現場での体験に裏付けられた研究成果と課題について話した。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞社)


会見リポート

持続的伝承に変化が必要/「弟子」の語りも記憶に残る

中川 和之 (時事通信社解説委員)

 被災地での伝承活動を支える実践的な研究を重ねている佐藤氏は、岩手県陸前高田市での調査で、津波から逃げた人に共通したのが、「過去の津波を知っていた」と、「事前に家族で話し合っていた」の両方の回答だったと紹介。津波が高くても亡くなった方が出なかった普代村や洋野町の地域では慰霊祭を継続的にやっていたとし、伝承は未来の命を守る上で非常に重要と述べた。

 一方で、宮城県気仙沼市の階上地区では、過去の津波で越えなかった高台に避難した方が犠牲になったことも指摘。過去を伝えるだけの伝承ではなく、その後の新しい知見や復興の状況などに合わせて学び直し、変化して伝えていくことが大切だとした。

 気仙沼市の東日本大震災遺構・伝承館では、最新の知見の展示だけでなく、震災を知らない中学生が経験者から聞き取りを行い、ガイドになる生徒もいることを紹介。毎年、地域で活動をふり返り、新たなプロジェクトが立ち上がるなど、持続可能な運営ができているとした。

 語り部の話を覚えていたかを確かめる実験で、時間がたって最も覚えていたのが生の語りだったが、2番目は語り部の話を「弟子」(非当事者)が語ったケースで、本人の映像や音声、文字テキストよりも記憶に残ったという結果が出たという。佐藤氏は「第2世代、第3世代を見据え、本人でなくても伝えられることに自信を持つことができた」とした。

 一方で、佐藤氏が直後から取り組んだデジタルアーカイブについては、「(報道の)皆さんには自明なのかもしれないが、編集されていない大量のデータだけでは力不足」とし、「ストーリーや主観、文脈をセットにしないと後世に残っていかないというのが私の教訓」と語った。

 最後に佐藤氏は「災害が起きてしまう場所には、自然の恵みもあり、私たちが暮らして歴史を作ってきた」とし、「自然と共に生きる」という言葉を書き残して会見を終了した。


ゲスト / Guest

  • 佐藤翔輔 / Shosuke SATO

    東北大学災害科学国際研究所准教授

研究テーマ:3.11から12年

ページのTOPへ