2023年02月13日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「かかりつけ医を考える」(7) 葛西龍樹・福島県立医科大学主任教授

会見メモ

日本における家庭医療医の第一人者とされる葛西龍樹・福島県立医科大学主任教授が、「患者中心の医療の方法 家庭医・総合診療医の専門性」をテーマに話した。

葛西さんは、著書『医療大転換―日本のプライマリ・ケア革命』(筑摩書房、2013年)で、家庭医の必要性と重要性について先駆的に提起してきた。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

 


会見リポート

医師のすみ分けよりも家庭医を育てる議論を

柳瀬 和央 (日本経済新聞社編集委員兼論説委員)

 日本における家庭医療学のパイオニア的な存在である葛西氏が、我が国のプライマリ・ヘルス・ケア(PHC)が整わない現状にもどかしさやいらだちを感じていることが伝わった。

 PHCは「全人的に診る医療」と称されることが多い。葛西氏はそれを「患者を取り巻く様々な要素(コンテクスト)を理解することだ」と説いた。家族、家計、雇用、余暇、地域、文化、保健医療制度。臨床の情報は、患者が生きる世界のコンテクストの中に置かれて初めて役立つものであり、こうした「患者のための医療」を追求する学問が家庭医療学だという。

 問題を定義するのは医師ではなく患者である。客観的側面よりも(患者の)自覚的側面を重視すべきである。家庭医療の価値を認識した国々ではこんなパラダイム転換が起き、1978年の国際会議では国家の保健医療システムにPHCの概念を導入するよう要請するアルマ・アタ宣言が採択された。だが日本の動きはあまりに鈍い。1980年代に厚生省が掲げた「家庭医構想」は日本医師会の抵抗で頓挫。PHCを学んだ「総合診療医」は専門医資格として認められるようになったものの、診療科として標榜することは許されていない。これではこの道を志す医師はなかなか増えない。

 日本のかかりつけ医は家庭医への移行期の存在と位置づけるべきものだが、岸田政権が考える制度整備の内容は微温的で、その先の「家庭医をどう育てるか」という戦略を欠く。「今の医師をどうすみ分けるのかの議論が中心で、これからどういう医師が必要でどう育てていくかの議論がない」という指摘はまさに正鵠(せいこく)を射ている。


ゲスト / Guest

  • 葛西龍樹 / Ryuki KASSAI

    福島県立医科大学医学部地域・家庭医療学講座主任教授

研究テーマ:かかりつけ医を考える

研究会回数:7

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