2022年11月18日 15:30 〜 16:30 10階ホール
アルバロ・ラリオ国際農業開発基金(IFAD)総裁 会見

会見メモ

開発途上国の農業開発支援の資金を提供している国際農業開発基金(IFAD)のアルバロ・ラリオ(Alvaro Lario)総裁が会見した。

新型コロナウイルスのパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻、気候変動が食料安全保障に与える影響や、世界の食料供給において小規模農家が果たす役割と支援の重要性、次期G7議長国の日本への期待などについて話した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

「小農」支援で危機に歯止め

緒方 大造 (日本農業新聞論説委員)

 「危機が危機を招き、世界が漂流することがあってはならない」。厳しい口調が食料危機の深刻さを物語る。ウクライナ危機、新型コロナ、気候変動など「複合有事」の最大の犠牲者は、開発途上国の人々。世界の農家の大宗を占める小規模農家にとって、食料・穀物・生産資材価格の高騰は死活問題だと訴えた。平和こそ食料安全保障の礎だと改め思う。

 国際農業開発基金(IFAD)は、資金支援を通じ、アフリカ、アジアなどの農村の貧困や飢餓改善に取り組む国連の専門機関。1977年に設立。加盟国の資金拠出を原資に農業支援プログラムを展開する。日本は5番目の拠出国。ラリオ氏は、財務通で国連食料システムサミットなどを主導した手腕が評価され、今年10月総裁に就任した。来日に合わせ、アジア初となる連絡事務所を横浜市に開設した。

 力説したのが、小規模農家を自立へと導く「人への投資」。日本政府、民間企業、農協などに一層の資金・技術支援を呼び掛けた。食料安全保障分野で日本のリーダーシップにも期待を寄せたが、わが国がその任に値するのか。食料・資源の大半を輸入に依存し、生産基盤が弱体化する日本の食と農のあり様こそ問われている。支援する、支援される関係を超え、多様な担い手の参画で、地域資源を生かし、環境と調和した循環型農業を共に築く時だ。

 揺らぐ世界の食料安全保障を前に国連の機能不全を問う声もある。「危機から学んだのは、世界はつながりあっているということ。一国では存在できない」。途上国の農業支援に特化し実績を積んできた自負と使命感が垣間見えた。

 「世界の食料システムの中核を担うのは小規模農家だ」という言葉に勇気を貰う。国連の「小農の権利宣言」(2018年)、「家族農業の10年」(2019-2028年)がお題目とならないよう、新総裁の発信力と実行力に期待する。


ゲスト / Guest

  • アルバロ・ラリオ / Alvaro Lario

    国際農業開発基金 / International Fund for Agricultural Development (IFAD)

    国際農業開発基金総裁 / President, International Fund for Agricultural Development (IFAD)

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