2022年11月09日 16:00 〜 17:00 10階ホール
フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官 会見

会見メモ

7日に来日したフィリッポ・グランディ(Filippo Grandi)国連難民高等弁務官が、離日を前に登壇。ウクライナをはじめとする各国の難民、避難民の現状、日本に求めることなどについて話した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 賀来華子


会見リポート

ウクライナ以外の窮状にも目を

井田 香奈子 (朝日新聞社論説委員)

 「国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の歴史上、最も劇的な局面の一つ」と現状を表現した。

 世界の難民・避難民の数が、第2次世界大戦以降で最も多い1億300万人に達したという。そのうち1400万人は、ロシアによるウクライナ侵攻で自宅にとどまれなくなった人たちで、目下のところ、UNHCRの最大の支援対象になっている。

 ウクライナ情勢をきっかけに、日本政府の拠出のほか、国内の企業・個人からも寄付が集まり、UNHCRの活動が注目された。そのことに感謝する一方、「ほかの地域の支援にも目を向けてほしい」と強調した。

 シリア、エチオピアをはじめ、圧政や地域紛争による人々の窮状が続くが、リソースが不足するとウクライナ関連以外の活動を縮小せざるをえない実情を伝え、「人道支援の縮小で最も脆弱な人たちを苦しめることはできない」と話した。

 3日間の日本滞在中は、法相、外相ら政府高官と会談し、企業、NGOの関係者とも意見を交わした。

 年に数千、数万単位の難民を受け入れている欧米諸国に対し、日本では数十人にとどまっている現状について「日本が難民を心から迎え入れる国になるには多くの課題がある」と指摘。法、運用、省庁間の調整などを挙げ、「これらすべての分野で協力を続けていくと、法相と合意できたことは朗報」と述べた。

 政府が昨年提出し、廃案になった出入国管理法改正案については、難民該当性を確認する手続きなどが「国際基準に完全には合致していなかった」との見方を示した。12月に高等弁務官補を日本に送り、協議を続けるという。

 イタリア出身で、アフガニスタン、パレスチナなど人道危機の最前線での活動を経て、2016年にUNHCRのトップに就いた。今の立場での訪日は7回目で、横浜市にあるウクライナから避難してきた人たち向けのカフェを訪ね、人々と交流する時間ももった。


ゲスト / Guest

  • フィリッポ・グランディ / Filippo Grandi

    国連 / United Nations

    国連難民高等弁務官 / United Nations High Commissioner for Refugees

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