2022年11月02日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「3期目の習近平体制」(1) 加藤青延・武蔵野大学特任教授

会見メモ

3期目に入った習近平体制の人事とその狙いについて、長く中国をウォッチしている加藤青延さんが解説した。

 

司会 出川展恒委員

 


会見リポート

共産党大会、独裁色強まる衝撃的結果

村上 太輝夫 (朝日新聞社論説委員)

 先日の中国共産党大会をどうみるか。今回ばかりは誰もが「習近平氏の独裁色が強まった」との見方をとらざるを得ない。習氏が党総書記として当面続投することが決まり、しかも党最高指導部の常務委員ばかりか、政治局までが習氏の息のかかった人物でほぼ占められた。大方の予想をしのぐ徹底ぶりで、加藤さんが冒頭語ったとおり「衝撃的な結果」だった。

 加藤さんは、この事態を四つの四文字言葉に因数分解し、それぞれ予想される弊害を提示した。①「絶対権威」。柔軟な政策変更は難しい。②「権力独占」。非効率や判断ミスのおそれがある。③「服従要求」。部下の無気力、不作為を助長する。④「思想統一」。国民の面従腹背をもたらす――という具合だ。

 習氏が長く勤務したことで知られる福建省についての指摘も興味深い。加藤さんは現地取材経験を踏まえ、習氏が仕事をした同省アモイ、寧徳、福州のいずれも、対台湾工作で重要な意味を持つとみる。だからこそ習氏は「台湾を併合するうえで唯一無二の存在」なのだ。もちろん、習氏に強い意欲があっても台湾統一はかなりハードルが高いのだが。

 一般の関心は、党大会閉幕時に胡錦濤前総書記が途中退席した映像をめぐってのものだろう。政治的に深読みした解説がさんざん消費されている。司会者が最後にこの話題を持ち出すと、加藤さんは「真相をつかめていない」「わからない」と明言した。

 中国の権力中枢にかかわる情報は裏付けを得るのが極めて難しいだけに、言った者勝ちというところがある。その誘惑に負けず、わからないことをわからないとはっきり言うことこそ、報道に求められる基本姿勢だ。やや苦しそうな表情を浮かべながら答える姿に、NHK記者として中国を観察してきたベテランの矜恃を見た思いがする。


ゲスト / Guest

  • 加藤青延 / KATO, Harunobu

    日本 / Japan

    武蔵野大学特任教授 / professor, Musashino University

研究テーマ:3期目の習近平体制

研究会回数:1

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