2023年01月27日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「2023年経済見通し」(5) 入山章栄(あきえ)早稲田大学大学院教授

会見メモ

経営戦略論、国際経営論を専門とする早稲田大学大学院教授の入山章栄(あきえ)さんが日本に求められるイノベーションなどについて話した。

 

 司会 野田雄輔 日本記者クラブ企画委員(テレビ東京)

 

※本会見のYouTube動画は公開しません。


会見リポート

日本は「知の探索」不十分

大石 信行 (日本経済新聞社シニア・プロデューサー)

 日本に足りないもの。その一つがイノベーションだろう。イノベーション推進の号令の下、政府も企業も必死に見えるが、成果はいまひとつ。なぜか?

 日本で最もイノベーションに詳しい経営学者の一人、入山章栄・早稲田大学大学院教授の答えは明快。企業の「知の探索」が不十分だからという。 

 イノベーションの出発点となるアイデアは、既存知と既存知の組み合わせ(新結合)から生まれる。しかし、人の認知の限界から、目前の知の結合に偏りがち。遠くの知を取り込む知の探索が必要だ。

 例えば、トヨタ生産方式の父、大野耐一氏は、アメリカのスーパーで、顧客が必要な品物を、必要な時に必要なだけ手に入れる様子を見て、生産工程に応用しようと考えた。まさに遠くにある知との組み合わせだ。

 そして、その組み合わせを磨き上げることが「知の深化」となる。

 知の探索と知の深化をバランスさせる、いわゆる「両利き経営」を実践する会社がイノベーションを生み出せる。だが、日本企業の多くが知の深化に偏り過ぎている。遠くの知との組み合わせは失敗が起こりがちで、経営者はリスクの少ない知の深化を重視してしまうそうだ。

 ダイバーシティ経営、人材流動化、評価制度の改革、デジタルトランスフォーメーション(DX)――。知の探索のためにやるべきことは分かっている。もっとも、それを実行する経営者の多くは任期が短く、長期視点を欠いたリスク回避に走りがちだ。

 「トップの任期を長くすべし」。入山教授の提言だ。長期となれば「独裁化」の不安もあるが、「いざとなれば、社外取締役が社長を辞めさせるコーポレートガバナンス(企業統治)」を確立すれば不安はないと主張する。

 イノベーションの方法論は見えた。後の課題はどう実行するか。経営者の胆力が求められているようだ。

 

 なお、入山教授が出演する「日経テレ東大学」YouTubeチャンネルでは「本格的な経済を、もっとたのしく学ぶ」をコンセプトに、経済・ビジネスを分かりやすく伝えている。こちらも必見だ。(https://www.youtube.com/playlist?list=PLwYx57BBCEc3RTdYeBmOX4CLIhqWVrN11)


ゲスト / Guest

  • 入山章栄 / Akie IRIYAMA

    早稲田大学大学院教授

研究テーマ:2023年経済見通し

研究会回数:5

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