2022年11月21日 15:45 〜 16:45 10階ホール
山中伸介・原子力規制委員会委員長 会見

会見メモ

9月26日に3代目原子力規制委員会委員長に就任した山中伸介氏が登壇。

発足10年を迎えた規制委員会のこれまでといまの取り組み、今後のあり方について話した。

質疑応答では、現在議論が進む高経年化した原子炉に関わる安全規制制度案、東京電力福島第一原発の廃炉の現状と今後などについて質問が相次いだ。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

厳正な規制曲げないと言明

吉田 卓矢 (毎日新聞社科学環境部)

 政府が原発の運転期間延長や次世代原発開発の検討を始めるなど、今年は国の原発政策の大きな転換点となった。東京電力福島第1原発事故後、10年にわたって原子力施設の安全規制を担ってきた原子力規制委員会の対応にも注目が集まっている。そんな中で、9月に委員長に就任した山中伸介氏が会見のタイトルに掲げたのは「原点を忘れず変化をおそれない」だった。

 原点はもちろん福島第1原発事故だ。事故後、それまで曖昧だった原子力の規制と推進は明確に分離され、規制を担う独立性の高い「3条委員会」として誕生したのが規制委だ。山中氏は冒頭、事故について「長年原子力に携わってきた者として、痛恨の極み。あのような原子力災害を二度と起こさないという決意で、審査や検査に取り組んできた」と語った。

 会見前半は、規制委の10年間の歩みを、規制活動と原発事故の調査・分析に分けて説明。規制活動で最も大切なのは、「科学的・技術的見地から、独立した意思決定をすることだ」と述べた。事故の調査・分析では、「これからは安定化の10年にしなければならない」と主張。処理水の海洋放出の必要性などを説いた。

 後半は、政府の政策転換への対応策を説明した。焦点となっているのが、原則40年、最長60年としている原発の運転期間だ。政府は、事故後に原子炉等規制法で定めたこの規定を他法令に移管して改正する方針だ。山中氏は、改正されても「厳正な規制が継続できるよう制度設計の準備を進めている」と話した。

 質疑応答では、政策転換によって規制委の独立性や厳正な規制が影響を受けるのではないかと懸念する声が複数上がった。山中氏は「独立の堅持と厳正な規制を決して曲げるつもりはない」と強調して理解を求めた。事故の教訓を忘れることなく、山中氏の言葉通りの厳正な規制が維持されるのか、報道機関も厳しくチェックする必要がある。


ゲスト / Guest

  • 山中伸介 / Shinsuke YAMANAKA

    日本 / Japan

    原子力規制委員会委員長 / chairman, Nuclear Regulation Authority

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