2022年09月12日 16:00 〜 17:00 10階ホール
中東の食料危機とウクライナ人道支援に関する国連WFP会見

会見メモ

新型コロナウイルス感染症のパンデミックや気候変動により食料危機が拡大するなか、ウクライナ産小麦に頼っていた中東地域では、飢餓が急激に悪化している。一方、8月には黒海穀物イニシアチブにもとづき、ウクライナの小麦を積んだ国連世界食糧計画(WFP)の穀物輸送船の航行が再開された。

WFPでウクライナを担当する中東・北アフリカ・東欧地域局局長のコリーン・フライシヤーさん、イエメン国事務所代表のリチャード・レーガンさん、イラク国事務所代表のアリー・ラザ・クレシさんが登壇し、現地での活動や日本、国際社会に求める支援について話した。

 壇上左からクレシさん、フライシヤーさん、レーガンさん

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 西村好美(サイマルインターナショナル)


会見リポート

中東の食糧危機 通貨安で悪化

岩本 健太郎 (日本経済新聞社国際報道センターNikkei Asiaグループ)

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まって半年余り。国連やトルコの仲介で8月には黒海経由でのウクライナからの穀物輸出が再開し、高騰していた小麦などの主要穀物の国際価格は戦争前の水準まで下がった。食糧供給体制への不安も和らいだように見えた。

 ただ、国連世界食糧計画(WFP)の幹部らによる9月12日の記者会見では、中東地域で依然として深刻な食糧危機が続き、通貨安が追い打ちをかけている現状が報告された。

 フライシャー氏は「食糧価格の国際相場は下がってきているが、残念ながら多くの国々で通貨安のため、実際の食糧のコストは以前とあまり変わらないという状況に陥っている」と述べた。WFPとしても購買力が下がり「以前と同じ水準で支援することが難しくなってきている」という。

 ウクライナからの穀物輸出再開を歓迎しつつも「事態が逆転しなければ世界中で飢餓がますます増大する」と危機感をあらわにした。ロシアなど肥料輸出国からの肥料の供給継続にも懸念を示した。来年のG7議長国を務める日本に対し「食糧安保を最優先課題として取り上げ続けてほしい」と呼びかけた。

 レーガン氏は、紛争で深刻な食糧危機に陥っているイエメンでWFPが「世界最大レベルの活動」を行っていると報告。人口の約6割に当たる1800万人に対して食糧供給事業を実施していると述べた。同国は必要な食糧の95%を輸入に依存しており、「今こそイエメンのことを忘れないでほしい」と訴えた。

 一方、クレシ氏は、イラクで湖が干上がったり河川の水位が下がったりするなど気候変動の影響を強く受け、食糧生産にも影響が出ていると説明。同国政府と協力して同国での食糧安保システムの強化に取り組んでいると報告した。「より大きな危機になる前に、今行動に出ることが大事だ」と訴え、支援を呼びかけた。


ゲスト / Guest

  • コリーン・フライシャー / Corinne Fleischer

    国連世界食糧計画(WFP)

    国連世界食糧計画(WFP)中東・北アフリカ・東欧地域局長 / Regional Director for the Middle East, Northern Africa and Eastern Europe, WFP

  • リチャード・レーガン / Richard Ragan

    国連世界食糧計画(WFP)

    国連世界食糧計画(WFP)イエメン国事務所代表 / Representative and Country Director, WFP Yemen Country Office

  • アリー・ラザ・クレシ / Ally-Raza Qureshi

    国連世界食糧計画(WFP)

    国連世界食糧計画(WFP)イラク国事務所代表 / Representative and Country Director, WFP Iraq Country Office

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