2022年08月25日 17:00 〜 18:00 オンライン開催
「英保守党党首選と新首相誕生」細谷雄一・慶應義塾大学教授

会見メモ

約1年の英国での研究活動を終え、今月31日に帰国予定の細谷雄一・慶應義塾大学教授が、英国からリモートで登壇。英保守党党首選の特徴や次期党首が直面する内政・外政の課題、今後の日英関係などについて話した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

政治は異常事態 課題山積

森 千春 (読売新聞社編集委員室)

 国際政治の専門家である細谷雄一慶應義塾大学教授がオンラインで、次期英国首相を決める保守党党首選について解説した。ケンブリッジ大学での約1年間の研究生活を終え、帰国する直前だ。現地からの生き生きした報告となった。

 「イギリスの政治は異常な事態になっている」。こんな厳しい言葉で始まった。今回決まる首相は、欧州連合(EU)離脱を決めた2016年の国民投票から数えて4人目となる。これほど頻繁な首相交代は異例だ。EU離脱と同時進行した英国政治の変調は、まだ治まっていない。

 党首選は女性のトラス外相とインド系の男性、スナク前財務相の2候補に絞られ、党員投票で決着がつく。有力視されるトラス氏は、過去の政治経歴では、たびたび立場を変えてきた。党首選ではサッチャー元首相のごとく確固たる信念があるかのように振る舞う。そうした「パフォーマンスがうまい」と評された。

 EU離脱の過程で保守党は対EU強硬派が主導する「イデオロギー政党」化した。党員の構成は、白人、男性、富裕層に偏っている。トラス氏はそうした今日の保守党に向けてアピールしたのだろう。

 今回の党首選は候補者の多様さ(ダイバーシティー)が話題となった。有力候補の多数が女性と民族マイノリティーの出身者だった。細谷氏は英国に一種のプラグマティズム、すなわち「一番有能な人間が国を牽引しなくてはならない。人種、性別、年齢は関係ない」という考え方が生きていることを指摘した。政治史に詳しい氏らしい見解だった。

 細谷氏も説いたように、新政権が直面する内外の課題は山積している。特に注目されるのは、ウクライナへの軍事支援と対ロシア制裁だ。政府は対露強硬姿勢を維持しようとするだろう。国民生活を圧迫するエネルギー価格高騰にいかに対処するのか。英国政治から目を離せない。


ゲスト / Guest

  • 細谷雄一 / Yuichi HOSOYA

    慶應義塾大学教授、ケンブリッジ大学訪問研究員 / Professor of International Politics, Faculty of Law, Keio University / Visiting Fellow (2021/22), Downing College, the University of Cambridge

研究テーマ:英保守党党首選と新首相誕生

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