2022年08月10日 13:30 〜 14:30 10階ホール
「アフリカ開発の現場からーTICAD8を前に」(2) モハメッド・エルーミ駐日チュニジア大使

会見メモ

第8回アフリカ開発会議(TICAD8)が8月27、28日にチュニジアで開催されるのを前に、同国のモハメッド・エルーミ駐日大使が、会議の注目点や開催国としての思いなどを話した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 長井鞠子 サイマルインターナショナル


会見リポート

危機下のアフリカ開発/若者、女性の人材活用を訴え

下田 敏 (日本経済新聞社編集委員)

 新型コロナウイルスの感染爆発、気候変動リスクの増大、ウクライナ紛争に伴う食料不安という複合的な危機に世界が直面するなか、日本が主導する第8回アフリカ開発会議(TICAD8)が8月2728日にチュニジアで開催される。ホスト国を代表して会見したエルーミ駐日大使の発言には、緊急援助とあわせて中長期の視点に立った協力への期待がにじんでいた。

 「最後のフロンティア」として成長可能性が注目されるアフリカだが、パンデミックやウクライナ紛争では社会や経済の脆弱性も明らかになった。ワクチン接種率は極めて低く、半数近くの国が必要な小麦の3分の1以上を輸入に頼っている。エルーミ大使はワクチン提供などの日本の支援に感謝を表明したうえで「TICADではワクチン開発や医療研究での協力、食料やエネルギー不足などウクライナ紛争の経済的なインパクトについて議論したい」と語った。

 中長期の課題では、SDGs(持続可能な開発目標)の推進、平和構築に向けた国際社会への働きかけ、スタートアップ支援を含めた人材育成を挙げた。アフリカの若者や女性を「まだ活用されていない資源」と位置付け、教育支援や日本企業での職業訓練の重要性を訴えたのが印象的だった。

 アフリカでは中国が投資や貿易を拡大し、影響力を強めている。日本は2013年のTICADで「援助から投資へ」を掲げたが、この間に対アフリカ直接投資残高は半分に減り、企業進出も進んでいない。インフラが整っておらず、政治的にも不安定なアフリカ投資のリスクが大きいのは確かだが、まずは動かなければ何も始まらない。

「いろいろな国や地域とのパートナーシップがあるが、アフリカのオーナーシップ(自主性)の尊重やノウハウの移転は日本独自のやり方だ」というエルーミ大使のコメントがヒントになるのではないだろうか。TICADでの未来志向の議論に期待したい。


ゲスト / Guest

  • モハメッド・エルーミ / Mohamed ELLOUMI

    チュニジア / Tunisia

    駐日チュニジア大使 / ambassador to Japan

研究テーマ:アフリカ開発の現場からーTICAD8を前に

研究会回数:2

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