2021年09月07日 14:30 〜 15:30 オンライン開催
英国空母打撃群 会見

会見メモ

英空母「クイーン・エリザベス」を中心とする英国空母打撃群が9月4日、横須賀に寄港した。

指揮官を務めるスティーブ・ムーアハウス准将とジュリア・ロングボトム駐日英国大使が艦上からリモートで会見した。

ムーアハウス准将は、派遣の意義、日英の安全保障強化に向けた取り組みなどについて述べた。ロングボトム大使は日英関係や「統合レビュー」で示された“グローバル・ブリテン”の意味付けについて話した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

通訳 西村好美(サイマル・インターナショナル)

 

◆ムーアハウス准将のスピーチ(英語版)Transcript of the speech (in English)

◆ロングボトム大使のスピーチ(英語版)Transcript of the speech (in English)


会見リポート

英、インド太平洋に“傾斜”/最新空母派遣で示した決意

津屋 尚 (NHK山口放送局放送部長)

 英国史上最大にして最新の空母クイーン・エリザベスが約100日をかけた航海の末、日本にやってきた。船の就役後初の作戦行動となったこの航海で、日本は寄港地の一つではなく“最終目的地”だ。空母艦隊を指揮するムーアハウス准将は「空母打撃群の派遣はイギリスがインド太平洋地域重視を強める象徴であり、日本訪問はその中核だ」と強調。ロングボトム駐日大使は「日英は、自由・民主主義・人権・法の支配など共通の価値観を持つ」と両国の多層的な関係強化の意義を語った。

 イギリスは今、自らを「グローバル・ブリテン」と呼ぶ大戦略を打ち立て、欧州だけでなく半世紀ぶりにスエズ以東のインド太平洋地域に重心を移し、自由主義世界をリードするグローバルパワーとして復活を目指している。インド太平洋こそが世界の経済と覇権を左右する舞台であり、日本との「同盟関係」が鍵になるとイギリスは考えている。英海軍全体の旗艦でもある最新空母をはるばる日本に派遣したことは、その決意を行動で示したものだ。そして、地域の秩序と安定を脅かしかねない中国へのけん制であることも明らかだ。

 英空母のアジア派遣に対して中国政府が強く反発したことはすでに伝えられているが、ムーアハウス准将によれば、空母が南シナ海を通過した際、中国海軍の艦艇は「まるで影のように」追尾してきたという。

 准将は、台湾有事への対応について問われると「空母打撃群は常に警戒を怠らない。災害であれ軍事作戦であれ命令が下ればどこへでも駆けつける」とアジアが空母の作戦エリアに含まれることをにじませた。英海軍は今後もインド太平洋に艦艇を持続的に配置し、自衛隊ともさらに連携を強める方針を示している。

 日米豪印のクアッドの動きをはじめ、アメリカ一辺倒だった日本の外交安全保障体制に変化が起きつつあるが、イギリスのアジア回帰は特に大きなインパクトだ。


ゲスト / Guest

  • スティーブ・ムーアハウス / Steve Moorhouse

    英国海軍准将(英国空母打撃群指揮官)

  • ジュリア・ロングボトム / Julia LONGBOTTOM

    駐日英国大使 / Ambassador to Japan, UK

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