2021年09月15日 13:30 〜 15:00 オンライン開催
「新・国際課税ルール」(5) 田中道昭・立教大学ビジネススクール教授

会見メモ

GAFAなど巨大IT企業に詳しい田中道昭・立教大学ビジネススクール教授が、巨大IT企業の最近の動向を解説し、新国際課税ルールが巨大IT企業に与える影響や今後の見通しを示した。

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

GAFA、課税強化より分割を懸念

森國 司 (日本経済新聞社ビジネス報道ユニット)

 130カ国・地域が大枠合意した新しい国際課税ルールの念頭におかれたのが巨大IT(情報技術)企業だ。田中道昭・立教大学ビジネススクール教授が「GAFA」などの動向を解説。「課税強化が巨大ITに与える影響は限定的。彼らが本当に懸念しているのは分割議論だ」と指摘した。

 グーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれる巨大ITを分析するポイントとして田中教授は「デジタル化、サービス化、無形資産化、プラットフォーム化」を挙げた。例えば無形資産は同時に何度でも使え、デジタル化と組み合わせれば追加的な費用を抑えて加速度的に拡張できる。アマゾン・ドット・コムの電子書籍サービスが最たる例だ。

 巨大IT企業は、優れた顧客体験の提供を強みにオンライン広告やスマートフォンなど各分野で独占的地位を築く。競合になり得る企業をM&A(合併・買収)でのみ込むことで競争が起こりにくくなり、超過収益を得ている。

 今や巨大ITはプラットフォームをハード、ソフト、サービスなど複数の階層で連動させる「エコシステム」を構築。アップルはヘルスケア、アマゾンは製造業IoTの分野までその影響力を広げようとしている。

 エコシステム化は「デジタルの世界にとどまらない」(田中教授)。自動車では米テスラがEV、太陽光、蓄電池を扱う「クリーンエネルギーのエコシステムの会社」と目され、時価総額は他の主要自動車メーカー13社合計を超えた。

 新型コロナウイルス下で進むデジタル化を追い風に、巨大ITは時価総額をさらに膨らませた。田中教授は「多少の課税強化ではこの流れは大きく変わらない」とみる。彼らが最も恐れるのが分割議論だ。ただ「米中のテクノロジーの覇権を巡る戦いという安全保障の面では好ましくないことになる」(田中教授)。競争促進による消費者の利便性向上か、国家の安全保障か。今後も議論が揺れ動きそうだ。


ゲスト / Guest

  • 田中道昭 / Michiaki Tanaka

    立教大学ビジネススクール教授 / Professor of Rikkyo University

研究テーマ:新・国際課税ルール

研究会回数:5

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