2021年08月11日 10:30 〜 11:30 オンライン開催
中満泉・国連事務次長(軍縮担当上級代表)

会見メモ

国連事務次長(軍縮担当上級代表)の中満泉さんが登壇し、「岐路にある軍縮と安全保障:AI・サイバー・宇宙と核兵器をめぐって」をテーマに、国連の軍縮分野トップとしての問題意識、現在の取り組みなどについて話した。

中満さんは2017年に国連事務次長(軍縮担当上級代表)に就任して以来、毎年広島、長崎の平和記念式典に出席しており、今年も式典にあわせ帰国した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

核禁条約、NPTと矛盾せず

河野 憲治 (NHK解説委員長)

 核軍縮をめぐって、今年二つの大きな前進があった。核兵器禁止条約の発効と、米ロ間でのさらなる戦略兵器削減にむけた対話の開始だ。中満氏は、核保有国が核兵器の近代化を続けるなど「全体的な状況は悪化している」との認識を示したうえで、来年1月に始まる見通しのNPT再検討会議では、「こうした動きを追い風に成果を出したい」と述べた。具体的には、「核兵器が使用されるリスクを軽減するための実質的な措置をつくることだ」と述べて、先制不使用も含め政治的な宣言を促すことや、信頼醸成のメカニズム構築などを議論する考えを示した。

 核兵器禁止条約については、来年3月に第1回締約国会議が開かれることになったが、日本政府はオブザーバー参加するかどうか決めていない。中満氏は、「条約はNPTと対立するものではない。保有国による核軍縮を後押しし、NPTを補完するためのものだ。核軍縮は、様々な取り組みにこの条約を新たに加えて、全体として成果を目指すべきだ」との考えを示した。

 軍縮においても、AIやサイバー、宇宙利用などが新たな課題となっている。中満氏は、技術革新が予想を超えるスピードで進み、手に入りやすい民生技術が使われていることが問題だと指摘し、既存の国際法を適用して規範を強化していくことが不可欠だと強調した。なかでもAI兵器については、「機械が人間の命を奪う決定をすることは許されない」との立場から各国との協議に力を入れたいとの決意を示した。

 そして今後は民間の知見を取り込んでいくことが重要になると指摘。「国連の役割は、政府間の軍縮交渉を支援することだったが、これに加えて、政府以外の知見も集めて議論に組み込んでいくファシリテーター的な役割が大きくなってくる」と述べ、「新しい安全保障や軍縮へのアプローチを考えていきたい」と今後への抱負を語った。


ゲスト / Guest

  • 中満泉 / Izumi Nakamitsu

    国連 / UN

    国連事務次長(軍縮担当上級代表) / Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs

ページのTOPへ