2021年07月12日 14:15 〜 15:15 オンライン開催
「クラウドサービスの現状と展望」長崎忠雄・アマゾン ウェブ サービス ジャパン代表取締役社長

会見メモ

官民による活用やコロナ禍によるテレワークの拡大などで、クラウドサービスへの需要、関心が高まっている。

クラウド分野での大手企業であるアマゾン ウェブ サービス(AWS)ジャパンの長崎忠雄代表(写真左から1枚目)、瀧澤与一技術統括本部 レディネスソリューション本部長(同2枚目)が登壇し、クラウドサービスの基礎知識から、最新の活用事例、そしてセキュリティやデータ保護など、クラウド活用において留意すべき点などについて話した。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

クラウドサービスは技術革新の基盤

石黒 穣 (読売新聞社編集委員)

 ネット通販世界最大手アマゾンには、もう一つのビジネスの柱がある。法人向けクラウドサービス事業のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)だ。今日、アマゾン全体の営業利益の半分近くをAWSが稼ぎ出すという。

 クラウドサービスを提供する事業者は、大型コンピューターやデータセンターなどのハードを備えている。利用者はネットで接続し、高速計算を行ったり、膨大なデータを保存したりできる。クラウド上で、データ解析などに使える様々なソフトウェアも利用できる。

 企業や公共機関にとって、計算機やデータセンターを自前で設けるのがかつては主流だったが、クラウドサービスはその代用をしてくれる。利用者は基本的に、サービスに対して使った分だけ料金を支払う仕組みだ。アマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン代表取締役社長の長崎忠雄氏は「企業が個々に築いていた設備をAWSで置き替えることにより多額の初期投資が不要になる」とメリットを挙げた。

 コスト面だけではないようだ。今日、テクノロジーの進化の速度はすさまじい。クラウド上では、人工知能(AI)を駆使する解析プログラムなどの最新ソフトウェアが次々に加えられていく。利用者にとっては、先端プログラムが手軽に手に入る。

 長崎氏は「開発者は、頭に浮かんだアイデアをクラウド上のリソースを使い、ごく短時間で実装できる。クラウドサービスは、これからのイノベーションを支えるプラットフォームです」と力説した。

 新型コロナウイルス対策でもAWSが注目されたという。2020年春、感染が急速に広がった札幌市では、AWSを活用した保健所支援システムが1週間で完成した。濃厚接触者や病床データなどが一括管理できるようになり、現場の業務が円滑化したそうだ。

 ソニーによる電気自動車のプロトタイプ製作、製薬企業モデルナによる新型コロナワクチン開発などでも、クラウドサービスが迅速な研究開発に役立てられているという。

 個人情報などをクラウドで保存することには、抵抗があるという利用者も多いだろう。瀧澤与一氏は、「データの所有権、統制権はあくまでユーザーにある」と述べ、勝手に第三者に利用されることはないことを強調した。

 クラウドサービスの世界市場ではAWSがシェアトップ、これにマイクロソフトやグーグルが続く。日本国内では富士通やNTTグループが健闘しているものの、米国のプラットフォーマーの前には影が薄い。

 検索やSNSのサービスと同様に、クラウドでも米プラットフォーマーに世界市場の寡占を許すことになるのか。会見では「独占への社会的な懸念にどう対応するか」との質問もあったが、長崎氏は「(日本法人代表としては)答える立場にない」と述べるにとどまり、真正面からの回答は聞けなかった。


ゲスト / Guest

  • 長崎忠雄

    アマゾン ウェブ サービス ジャパン代表取締役社長

  • 瀧澤与一

    アマゾン ウェブ サービス ジャパン技術統括本部 レディネスソリューション本部 本部長/プリンシパルソリューションアーキテクト

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