2021年06月04日 16:00 〜 17:00 オンライン開催
「ヤングケアラー その実態と課題」濱島淑惠・大阪歯科大学教授

会見メモ

 写真左から濱島淑惠さん、高岡里衣さん、尾形祐己さん

 

ヤングケアラーと呼ばれる家族の介護や世話を担う子どもの問題が顕在化している。

政府は4月、初となる全国実態調査の結果を公表、5月には支援策を打ち出した。

ヤングケアラーの調査研究を行ってきた大阪歯科大学教授の濱島淑惠さんがリモートで登壇し、ヤングケアラー現状、課題などについて話した。

元ヤングケアラーの高岡里衣さん、ひかるさん(仮称)、尾形祐己さんも参加し、自身の経験をもとに、支援のあり方などについて話した。

司会 佐藤千矢子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

支援者の傾聴力・理解が必要/背後の大人の問題にメスを

畑山 敦子 (朝日新聞社文化くらし報道部)

 病気や障害のある家族や幼いきょうだいの世話をする18歳未満の「ヤングケアラー」の実情がわかってきた。国が4月に公表した全国調査では、公立中学2年の5・7%、公立の全日制高校2年の4・1%がケアラーで、1日平均約4時間を世話にあてていた。周囲が気づき、子どもや家族を支えることが求められる。

 ヤングケアラーは身体的な介護だけでなく、家事、ケアが必要な家族の見守り、話し相手など情緒的ケアなどさまざまな役割を担う。大阪歯科大の濱島淑恵教授が2016年に大阪、18年に埼玉のそれぞれ一部の公立高校で行った調査では4~5%の割合でヤングケアラーがいて、国の調査結果とも近かった。濱島さんは「ケアすること自体は悪いことではないが、学校の欠席や勉強の遅れ、友人関係が希薄になり孤独を感じるなど、子どもの身体・精神面に影響が出る場合がある」とする。

 小学4年の頃から20年以上、難病の母をケアした高岡里衣さんは「母を支えることや家事に加え、自分のこともやり、しんどかった」という。だが、「保健室の先生に話したら、『気持ちの問題』と追い返された。支援にあたる人の傾聴力や理解が必要」と語った。精神疾患のある母を支える、ひかるさん(仮名)は「家のことは外で話すことではないと思って相談しなかったが、自分の健康も悪化して、高校と大学とも中退、編入学した」と話した。

 「家族が家族をケアするのは当たり前という固定観念が社会にあり、専門職もケアする人を支援する視点が弱かった」と濱島さんはみる。国は5月、相談体制の充実や自治体ごとの現状把握の推進などの支援策を示した。濱島さんは「子どもだけでなく、背後にある大人の問題にもメスを入れ、家族を支える必要がある」とし、家事支援や介護サービスなどの充実や切れ目なく18歳以上のケアラーも支えることを求めた。


ゲスト / Guest

  • 濱島淑惠 / Yoshie Hamashima

    大阪歯科大学医療保健学部 口腔保健学科教授 / professor, Osaka dental university

研究テーマ:ヤングケアラー

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