2021年05月12日 14:30 〜 15:30 オンライン開催
ジュリア・ロングボトム駐日英国大使 会見

会見メモ

3月に着任したばかりのジュリア・ロングボトム駐日英国大使が会見した。

英国政府は3月に欧州連合(EU)離脱後の外交・安全政策の新たな方針となる「統合レビュー」を発表し、インド太平洋を重視する姿勢を鮮明にしている。

大使は「統合レビュー」を中心に、英国のインド太平洋地域への取り組みや日本をはじめ、同地域との今後のかかわり、大使としての今後のビジョンについて話した。

大使は1986年に英国外務省に入省。1990年~93年に二等書記官として、2012年~16年に公使として駐日英国大使館で勤務した。直近では、英国外務省コロナウイルス対策本部長を務めていた。

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

通訳 西村好美(サイマル・インターナショナル)

大使のスピーチ(英語版)Transcript of the speech (in English)

大使略歴(和文) 

     (英文)


会見リポート

新政策生かし日本と協力

森 千春 (読売新聞社論説委員)

 赴任して間もない大使が、日本記者クラブに初登壇した。

 冒頭、日本語でスピーチした。内容的には慎重だった。

 英国政府が3月に発表した「統合レビュー」を紹介した。今後10年間の外交・安全保障政策の指針を示した文書だ。欧州連合(EU)離脱後の方向性を示したとも言える。

 大使は、統合レビューが挙げた英国の施策の中で、日本との協力が期待できるポイントを列挙した。「気候変動・パンデミックなど世界的課題への取り組み」「科学技術への投資」「民主主義と人権の擁護」「貿易・資本・知識の自由な流れの擁護」「安全保障」の5点である。

 経済的に発展する「インド太平洋地域」を重視し、関与を強めることも力説した。ただし、注目される対中国政策を巡って、香港など具体的な問題で批判することは控えた。

 質疑応答では、「新型コロナ」関連の問いが目立った。ワクチン接種実施では、英国が先進国の中で先行している。その要因を聞く質問が出た。大使がワクチンの早期開発の経緯を語り、統合レビューの内容に関連づけたことが印象的だった。

 英政府は昨年前半、関係部局の垣根を越えワクチン政策を担当する「タスクフォース」を発足させた。政府が「リスク」をとって、成功するかどうか分からない、科学者と製薬企業の開発計画に投資した。

 大使は、「国家が新たな脅威に迅速に対応するためには、政府内の『統合』、政府と他の諸プレーヤーとの『統合』が重要だ」と強調し、こうした教訓がレビューにも反映されていると語った。

 会見を聞いて考えた。コロナ禍への対応を考える上で、一概に英国が模範にならない。昨年からの累計で、英国の感染者数・死者数は日本より桁違いに多い。ただ日本で政府内外の「統合」が足りないのではないか、と検討する上で、英国の例は参考になるだろう。


ゲスト / Guest

  • ジュリア・ロングボトム / Julia LONGBOTTOM

    駐日英国大使 / Ambassador to Japan, UK

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