2020年11月17日 14:00 〜 15:00 10階ホール
沖大幹・国連大学上級副学長   会見

会見メモ

沖大幹・国連大学上級副学長は、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」報告書統括執筆責任者などの経歴を持つ環境問題の専門家。日本の温暖化対策への国際的評価や、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標の見通しなどについて聞いた。2050年はわずか数十年先であり、その頃に不要なモノやサービスは今後作ったり使ったりすべきでないと訴えた。

司会 村山知博 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

排出ゼロ向け転換的変化を/弱者への配慮も必要

深谷 優子 (共同通信社科学部)

 沖大幹・国連大上級副学長は、新型コロナウイルス拡大の影響で世界人口の8%に相当する5憶人が貧困に、難民の数は最多の約8千万人になると推測し、気候変動に配慮しながら社会をよりよく立て直していく必要性を指摘。気候変動対策とウイルス対策は「他の人が制限すると自分にもメリットがあり、社会全体としてやるべき所が似ている」と話した。

 温室効果ガス削減の国際枠組み「パリ協定」で世界的な平均気温上昇を産業革命前より1・5度に抑える目標にも言及。目標達成には「2030年より十分前にCO2排出量が減り始め、50年には実質ゼロ排出にする必要がある」とのポイントを示し、今年10月の菅義偉首相による「50年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」との所信表明演説の背景を説明した。

 50年実質ゼロ排出に向け「毎年前年の7・2%減らしていけば10年で半減、30年で8分の1まで減る」との試算を紹介し、発電や輸送、家庭、産業の各部門ですべて再生可能エネルギーに変える必要があるとした。CO2の地中貯留(CCS)は国内で十分な量を処理できる見込みはなく、バイオマスは作付けに大規模な土地が必要など「慎重に取り組まないといけない」と警告した。

 コロナウイルスの影響で今年の世界のCO2排出量は、4~8%減るとの推計も引用。「これだけの社会的混乱を招いてもようやく年間7%程度」と継続的削減は容易でないことを示し「飛行機や車に乗らないとか電気を使わないのではなく、排出が少ない社会システムを作らなければならないことが明らかになった」と転換的変化の重要性を強調した。さらに今後生まれる物やサービスは脱炭素社会向けにデザインされなければならないとした。

 また気候変動対策と持続可能な社会の構築を同時に行うことが大切だとし、炭素税は弱者への再配分にも使うなど配慮を求めた。


ゲスト / Guest

  • 沖大幹 / Taikan Oki

    国連大学上級副学長 、国連事務次長補 、東京大学生産技術研究所教授 / Senior Vice-Rector, United Nations University / Assistant Secretary-General, United Nations / professor, Institute of Industrial Science, the University of Tokyo

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