2020年09月15日 16:00 〜 17:00 10階ホール
「新型コロナウイルス」(42) 歌舞伎はいま 十代目松本幸四郎氏

会見メモ

コロナ禍で休演していた東京・歌舞伎座での公演が8月1日、約5カ月ぶりに再開した。歌舞伎俳優の松本幸四郎氏が登壇し、休演が歌舞伎界に与えた影響、再開から1カ月半を経たいまの思い、ウィズコロナにおける歌舞伎のあり方について話した。

司会 中村正子 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

動画配信「図夢歌舞伎」に挑戦

藤谷 浩二 (朝日新聞社編集委員)

 コロナ禍は舞台芸術・古典芸能の世界にも大きな打撃を与えている。8月から5カ月ぶりに再開された東京・歌舞伎座に2カ月続けて出演中の松本幸四郎さんが、歌舞伎界の現状とこれからの課題を語った。

 歌舞伎座は3~7月の公演が中止となり、「十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行」(5~7月)は延期された。幸四郎さんらは3月歌舞伎座公演を無観客で映像収録して無料配信。4月には香川・金丸座で予定されていた父・二代目白鸚さんと自身の襲名披露公演が中止された。

 ステイホーム中には「舞台がないと役者は何もできない」と無力感に襲われたこともあったが、「生で演じるのを見てもらうことはできる」と、Zoomに着想を得た「図夢歌舞伎」を発案。「仮名手本忠臣蔵」を再構成し、5回にわたって有料生配信した。大道具、小道具、衣装、床山、音響といった職人たちに歌舞伎は支えられていると説明。彼らが技を鈍らせぬよう、手を動かせる場を維持することも考えたという。

 「環境が変わる中、待っているだけでは歌舞伎はなくなる」との危機感から配信作品に挑んだが、他の演劇でも配信が盛んになっている状況を踏まえ、「日常に入り込んでいる配信の中に歌舞伎というジャンルがあることが必要だと思う」と、今後も続けていく意向を示した。

 再開後の歌舞伎座は感染防止のため、1808席のうち823席を販売。大向こうのかけ声も禁止だ。前例のない4部制をとり、約1時間の演目を1本上演し、俳優やスタッフは各部ごとに入れ替わる。厳しい制約下での興行が続くが、「400年以上の歴史には不安な時代もあったが、歌舞伎は生き続けた。必要なものだと思われるようにするのが歌舞伎役者の使命です」と語り、演出や上演時の工夫にも言及。中堅世代のリーダーとして、歌舞伎界を支える責任感が言葉の端々ににじんだ。

 


ゲスト / Guest

  • 十代目松本幸四郎 / Tenth Matsumoto Koushiro

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:42

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