2020年08月05日 13:30 〜 14:30 10階ホール
「気候変動と豪雨災害」川瀬宏明・気象研究所主任研究官

会見メモ

2018年の西日本豪雨、2019年の台風19号、今年の九州豪雨など、異常気象による災害が毎年発生している。

これらの現象と気候変動にはどのような関係があるのか、気象庁気象研究所応用気象研究部の川瀬宏明主任研究官が確率的アプローチ、量的アプローチの双方から分析し、解説した。

司会 村山知博 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

気象研研究者紹介ページ

川瀬氏HP「Sky And Weather」

『地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題』


会見リポート

確率的手法で温暖化研究

井田 徹治 (共同通信社編集委員)

  過去に例のないような集中豪雨や熱波に襲われ、極域の雪や氷河の減少が各地から報告される。人間が大量に放出してきた二酸化炭素などの温室効果ガスによる地球温暖化の影響が顕在化し「気候の危機」と呼ばれるまでになった。人間が地球温暖化を引き起こしていることは今や、ほとんど議論の余地はない。

 だが、集中豪雨などの個別のイベントが温暖化の影響によるものか、例えば、西日本での雨の降り方に温暖化がどれだけ影響を与えているかを知ることは極めて難しい。そのための有用なツールが、計算能力が急速に進歩しているコンピューターで地球の気候変化を「再現」する気候モデルだ。気象研究所の川瀬宏明・主任研究官は気候モデルによる地域気候変動予測の第一人者だ。

 川瀬さんが紹介してくれた興味深い最新の研究成果は、気候モデルを使って、何回も大量のシミュレーションを繰り返して人為的な温暖化がある時と無い時とを比較し、異常気象イベントの発生確率が人間活動によってどれだけ変化するかを調べる「確率的アプローチ」に基づくものだ。

 イベントアトリビューションとも呼ばれるこの手法で、川瀬さんたちは、日本の最高気温記録を更新した2018年の日本の夏の猛暑は、温暖化がなければ発生する確率はほぼ0%であることを示した。温暖化の科学の進展が目覚ましいことを教えてくれる会見だった。

 最新の試算によれば、15年に採択された温暖化防止のためのパリ協定で各国が約束した温室効果ガス排出削減が実現できたとしても、今世紀末、産業革命以来の平均気温上昇は3度前後にもなるという。

 目覚ましい進歩を見せる気候の科学の結果を、政治がどれだけ真剣に受け止め、行動できるか。そこに人類の将来がかかっているのだと感じた。

 


ゲスト / Guest

  • 川瀬宏明

    日本

    気象庁気象研究所 応用気象研究部・第二研究室 主任研究官

研究テーマ:気候変動と豪雨災害

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