2020年08月06日 11:00 〜 12:10 10階ホール
「新型コロナウイルス」(37) 国境なき医師団

会見メモ

中東イエメンで約1年にわたり医療援助活動に従事し、7月15日に帰国した萩原健氏(写真左=緊急対応コーディネーター兼活動責任者)と同29日に帰国した落合厚彦氏(プロジェクト責任者)の2氏が、紛争下のイエメンにおける新型コロナウイルス感染症対応の現状と課題などについて話した。

落合氏は自主隔離期間のため、自宅からオンラインで登壇した。

 

司会 土生修一  日本記者クラブ専務理事兼事務局長


会見リポート

内戦続くイエメン/医療崩壊、コロナが追い打ち

浅見 麻衣 (時事通信社外信部)

 新型コロナウイルスの世界的流行により一番大きな影響を受けているのは、医療体制の脆弱な国や地域に住む人々だ。イエメンでは2015年から暫定政権と武装組織フーシ派の戦闘が続き、国連によればコロナ禍前から既に医療施設の半分が機能不全に陥っていた。これまで5回にわたってイエメンで活動したことのある萩原健さん(右)は「長引く紛争で医療体制が既に崩壊直前だったところに新型コロナが出現した。国際社会からの支援が停滞すれば医療体制は崩壊する」と警鐘を鳴らした。

 イエメンで初めて新型コロナの感染例が公式発表されたのは4月10日。07年から同国で常駐して活動を行ってきた国境なき医師団(MSF)は、国内13州にある30カ所以上の医療施設で既存の医療支援を続けながら、新型コロナへの対応も迫られた。萩原さんは「患者に呼吸器症状があっても新型コロナなのかどうか分からず、緊張を強いられる状況だった」と振り返った。

 MSFは現地の保健当局直轄の新型コロナ治療センター6カ所の開設を支援した。会見にオンラインで参加した落合厚彦さん(左)は、そのうちの一つで、国内避難民が多いイッブ州の治療センターについて、同センターで働くことを怖がる医療関係者が多くて人集めに苦労したことや、酸素ボンベの充填が追いつかず利用する病床数を減らさざるを得なかったことなど、開設時や運営面での苦労を語った。

 2人によると、イエメン市民の間では「治療センターで注射を打たれて死ぬ」「隔離されてしまう」といった間違った情報が広がり、特に5~6月、受診や治療を拒否する人が増えた。重症化して初めて病院に来る患者も多く、「どこにどれだけの患者がいて、(新型コロナが)拡散しているのかどうか把握が困難だ」(萩原さん)と言い、劣悪な衛生環境の中でさらに感染が広がる可能性も懸念されている。

 


ゲスト / Guest

  • 萩原健 / Ken Hagiwara

    日本 / Japan

    国境なき医師団(緊急対応コーディネーター兼活動責任者) / MEDECINS SANS FRONTIERES

  • 落合厚彦 / Atsuhiko Ochiai

    日本 / Japan

    国境なき医師団(プロジェクト責任者) / MEDECINS SANS FRONTIERES

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:37

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