2020年08月11日 11:00 〜 12:00 9階会見場
中満泉・国連事務次長(軍縮担当上級代表) 会見

会見メモ

中満泉・国連事務次長が、コロナ禍のなかで創設75年を迎えた国連のあり方、これからの国際協力、軍縮などについて話した。

中満さんは2017年の国連事務次長軍縮担当上級代表への就任以来、軍縮担当上級代表として、広島、長崎の平和記念式典への出席を続けており、今年も2週間の自己隔離を経て式典に参加した。

出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

核軍拡の流れに強い危機感

高木 良平 (共同通信社外信部)

 新型コロナウイルス感染症の大流行は、世界の社会システムのもろさを期せずしてあぶりだすことになった。中満氏は「人々の想像を超えたコロナの教訓は核兵器問題にも当てはまる。核戦争も想像しづらいことだが、そのリスクがある以上、予防する必要がある」と訴える。

 核軍縮を取り巻く環境は課題が山積している。トランプ米政権は昨年、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱し、米ロ間に唯一残る核軍縮枠組みとなった新戦略兵器削減条約(新START)の延長にも消極的だ。中国に対しては、新たな核軍縮の枠組みに参加するよう求めているが、中国は拒否して対艦弾道ミサイルなどの開発を着々と進めている。中満氏は「軍拡競争が始まりつつある」と強い危機感を示す。

 トランプ政権は核軍縮を進めるには、安全保障環境の改善が必要だと主張している。こうした大国の論理に対し、中満氏は冷戦期に激しく対立していた米ソなどが部分的核実験禁止条約に調印した例を挙げて「世界の安全保障環境が悪化しているからこそ軍縮を考えるべきだ」と異を唱える。

 広島、長崎の被爆者の悲願である核兵器禁止条約に、核保有国は背を向け続けている。中満氏はこの条約が核保有国五大国も加わる核拡散防止条約(NPT)の対立軸ではなく、補完する役割を果たすことを期待し「(核保有国と非保有国の)分断のツールにするのではなく、核軍縮の柱としてポジティブな形で機能するよう締約国をサポートする」と決意を語った。

 米国の「核の傘」を重視し、核兵器禁止条約に参加していない日本政府に対しては「扉を閉めずに条約をフォローしてほしい」と訴え、署名・批准しない場合でも条約発効後の締約国会議にはオブザーバー参加するよう呼び掛けた。来年開催予定のNPT再検討会議に向けた議論の行方を注視したい。

 


ゲスト / Guest

  • 中満泉 / Izumi Nakamitsu

    国連 / UN

    国連事務次長(軍縮担当上級代表) / Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs

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