2020年08月07日 10:30 〜 12:00 10階ホール
「米大統領選の行方」(5) 作家・ジャーナリスト 冷泉彰彦氏

会見メモ

米在住の作家・ジャーナリストである冷泉彰彦氏が米ニュージャージー州プリンストンからオンラインで登壇し、コロナ禍が大統領選に与えた影響や今後の展望などについて話した。

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ 』


会見リポート

コロナ収束が勝敗のカギ

小竹 洋之 (日本経済新聞社上級論説委員)

 11月3日の米大統領選は異例ずくめの展開だ。新型コロナウイルスの感染拡大で対面形式の選挙集会を思うように開けず、バーチャルな対応を迫られている。郵便投票への切り替えで開票作業が混乱し、選挙結果の正当性を問う訴訟が相次ぐ恐れもある。冷泉氏が「前例のないドラマ」と評するのも無理はない。

 共和党のドナルド・トランプ大統領が失速し、民主党のジョー・バイデン前副大統領がかなり優位に立っている――。冷泉氏の予想はオーソドックスだ。コロナ危機への対応の失敗、共和党内における離反の兆候、追加的な経済対策の遅れなどが響き、トランプ氏がバイデン氏に大幅なリードを許したとみる。

 トランプ氏がヒラリー・クリントン元国務長官を破った2016年の大統領選では、世論調査で捉えきれない「隠れトランプ」の支持者が多かったといわれる。今回はコロナ危機にあえぐ米国民の冷静な判断が勝り、同じような現象が広がらないのではないかと話していた。

 それでもまだ挽回のチャンスがあると冷泉氏は言う。ワクチン開発のメドが立ち、コロナ収束への期待が高まれば、株価上昇の追い風が吹く。より先鋭的な中国たたきで、支持基盤の結束を固めるのも不可能ではない。対するバイデン氏には健康不安や失言癖といった弱点が残る。前例なきドラマの行く末を、最後まで予断を持たずに見守るしかない。

 冷泉氏の分析は大統領選後の対外政策にも及んだ。バイデン氏が政権を奪取すれば、同盟関係や国際協調を重んじたオバマ前政権の外交政策の延長線上に回帰しそうだが、環太平洋経済連携協定(TPP)への復帰や在外米軍の負担を巡る対応には不安が残ると指摘していた。

 一方、トランプ氏には再選後の確たるアジェンダが見られないと強調する。選挙結果がどちらに転ぼうと、日本が気を抜けないことだけは確かだろう。

 


ゲスト / Guest

  • 冷泉彰彦 / Akihiko Reizei

    作家・ジャーナリスト(米在住) / writer/journalist

研究テーマ:米大統領選の行方

研究会回数:5

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