会見リポート
2020年06月24日
16:00 〜 17:15
10階ホール
「新型コロナウイルス」(29) 専門家会議構成員 脇田隆字座長、尾身茂副座長、岡部信彦構成員
会見メモ
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の脇田隆字座長、尾身茂副座長、岡部信彦構成員の3氏が会見し、専門家会議の活動を総括するとともに、今後の感染拡大のリスクに備えて、新たな専門家助言組織のあり方について話した。
司会 内城喜貴 日本記者クラブ特別企画委員(共同通信社客員論説委員)
写真左から尾身茂氏、脇田隆字氏、岡部信彦氏
会見リポート
期待と疑い背負った4カ月/同時刻に「廃止」発表の衝撃
辻 外記子 (朝日新聞社編集委員)
「本来の役割以上の期待と疑義。その両方が生じた」。新型コロナウイルス対策の政府の専門家会議メンバーの3氏が、4カ月間を総括した。次の流行に備え、助言組織のあるべき姿について提言を公表した。
まず、政府と助言組織の役割と責任の範囲を明確にする。助言組織は状況を分析・評価し、政府に提言。政府はどの提言を採り入れるかを決め、政策の責任を負う。政策を市民に伝える役割は主に政府が担う、といったものだ。
なぜこんな提言が生まれたのか。
「感染症対策とは、実験室の学問や純粋科学とは違う」。尾身茂副座長はそう述べ、新型コロナ対策の難しさを語った。本来、医学的見地から助言するのが目的だった専門家会議は、権限と責任に法的根拠がないまま、人々に行動変容を呼びかけるなど積極的な発信を続けた。
急がなければ、感染が爆発的に広まってしまうとの危機感が、背景にあった。脇田隆字座長は、「(政府の)諮問に答えるだけでなく、対策をとる必要があると考え、前のめりになっていった」と語った。
その結果、国の政策や感染症対策は、専門家会議が決めているというイメージが作られてしまった。批判も受けたが、「科学者としてのインテグリティー、すなわち客観性、政治的中立性、誠実さを守ってきた」と尾身氏は話した。
岡部信彦氏は2009年の新型インフルエンザ対策と比べ、「当時は諮問をうけるかたちで答申し、専門家の意見が通りづらかった。それに比べて進歩したと思う」と述べた。
会見とほぼ同じ時刻に西村康稔経済再生相が驚きの発表をしていた。「専門家会議を廃止し、新たな会議体をつくる」と。それを知った記者が「どうなのか」と問うと、会場の雰囲気が一変した。尾身氏は「大臣がそう言ったんですか?」「私はそれは知りません」と答えていた。
提言は、感染者情報の迅速な共有や研究体制の強化も政府に求めた。結びに岡部氏は「課題はある。解決し、よい方向にいけたら」。脇田氏は「これで終わりということではない。これからも取り組んでいく」。尾身氏は「どんな組織も完璧ではない。改善していくことが一番大事。我々の経験が少しでも役に立てば」などとあいさつをした。
新型コロナ対策はまだまだ続く。新体制のもと、よりよい政策やメッセージが打ち出せるのか。今後も注視していきたい。
ゲスト / Guest
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脇田隆字
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議座長(国立感染症研究所長)
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尾身茂
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長(独立行政法人地域医療機能推進機構理事長)
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岡部信彦
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議構成員(川崎市健康安全研究所長)
研究テーマ:新型コロナウイルス
研究会回数:29