2020年07月20日 15:00 〜 16:00 10階ホール
「新型コロナウイルス」(35) 日本学術会議のメッセージ 山極壽一・日本学術会議会長

会見メモ

写真左から山極氏、秋葉氏、糠塚氏。

 

日本学術会議の新型コロナウイルス感染症への取り組みについて、日本学術会議の山極壽一会長が、秋葉澄伯・同会議第二部大規模感染症予防・制圧体制検討分科会委員長(弘前大学特任教授・鹿児島大学名誉教授)、糠塚康江・同分科会幹事(東北大学名誉教授)とともに、オンラインで会見した。

学術会議は7月3日に、感染症対策のための常設組織を創設する提言を発表した。会見ではこの提言も踏まえ、「コロナ後の世界に向けて‐日本学術会議からのメッセージ」と題して話した。

司会 内城喜貴 日本記者クラブ特別企画委員(共同通信客員論説委員)

 

 提言「感染症の予防と制御を目指した常置組織の創設について」

日本学術会議


会見リポート

内閣府に常設の感染症委を

山田 哲朗 (読売新聞社論説委員)

新型コロナウイルス対策では、各国の首脳は情報が不十分な中で、都市封鎖といった重大な決断を迫られた。

 ウイルスの感染力などの知見や、感染状況のデータを素早く集め、有効な対策を考え、当局に選択肢を示す専門家集団が重要になる。

 日本では、急きょ設置された「専門家会議」がこうした役割を一手に担い、7月からは法的な裏付けのある「新型コロナウイルス感染症対策分科会」に切り替わった。この間、政府が専門家の意見に耳を傾けない、あるいは、専門家が政府の反対を押し切って独自の見解を発表する、などさまざまな軋轢も生じた。

 政治と科学の役割が問われる中、日本学術会議は7月3日、「専門家でつくる感染症委員会(仮称)を内閣府に常設し、平時から政府に助言すべきだ」とする提言をまとめた。前線で指揮に当たる都道県知事も同様の常設組織を持つべきだと訴える。

 司令塔機能の強化とはいえ、米疾病対策センター(CDC)の日本版を作れという主張とは異なる。提言をまとめた秋葉澄伯・鹿児島大名誉教授は、日本では「CDCの2~3倍の人員を擁する保健所を生かす」ことが適当だと述べた。「民間やアカデミアの力を結集するためにも、保健所の強化が必要だ」という。

 もとより、日本学術会議自体が日本を代表する専門家組織ではあるが、コロナ対策で動きは鈍い。山極壽一会長は「学術界が熟議をし意見をまとめるのには時間がかかる。政策には即応できない。日本学術会議の能力を超える」と率直に話した。

 経済的、社会的活動を行うことと、感染予防とは両立が難しい面がある。山極会長は「集会や移動、対話などの社会的絆を断ち切ってはいけない。制限は全国一律ではなく、エビデンスをもって、地域ごとに変えていくべきだ」と指摘した。


ゲスト / Guest

  • 山極壽一 / Juichi Yamagiwa

    日本 / Japan

    日本学術会議会長/京都大学総長 / President, Science Council of Japan / President, Kyoto University

  • 秋葉澄伯 / Suminori Akiba

    日本 / Japan

    日本学術会議第二部大規模感染症予防・制圧体制検討分科会委員長(弘前大学特任教授・鹿児島大学名誉教授)

  • 糠塚康江 / Nukatsuka Yasue

    日本 / Japan

    日本学術会議第二部大規模感染症予防・制圧体制検討分科会幹事(東北大学名誉教授)

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:35

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