2020年04月30日 15:00 〜 16:00 オンライン開催
「新型コロナウイルス」(16) 介護崩壊への懸念 高野龍昭・東洋大学准教授

会見メモ

感染リスクや物資・人員不足を理由に、自主休業する介護サービス事業所が増えている。

介護・医療の現場で実務経験のある高野龍昭・東洋大学准教授が登壇し、通所型施設・訪問介護などの事業継続に必要な支援や、介護体制の課題について話した。

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

高野龍昭准教授(東洋大学研究者情報データベース)

資料


会見リポート

訪問介護、経営危機はこれから

五十住 和樹 (東京新聞編集委員)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、訪問・通所介護サービスはどうなっているのか。利用者や事業所への影響は。「介護崩壊」を防ぐ手だては。ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど現場経験が豊かな東洋大の高野龍昭准教授が解説した。

 厚労省のまとめでは全国の休業状況は通所系が1・13%、訪問系が0・05%と影響は少ないように見えるが、「通常営業の事業所は少数派」が現実という。通所系の場合、受け入れ人数や時間、サービス内容を削減。新規利用者の受け入れは停止され、要介護者のADL(日常生活動作)や栄養状況、口腔ケアの低下、認知症の進行、独居・高齢世帯の社会的孤立など影響は深刻とした。休業やサービスの削減によるしわ寄せは家族に来ており、介護離職や虐待の増加が心配される。独居世帯では孤独死の危険性もある。

 訪問介護の現場では、防護衣など感染予防用品が不足し、感染症対策に不慣れなヘルパーが奮闘している。マスクをしていると認知症の利用者とのコミュニケーションができず、「三密」を避けられない身体介護の現状も詳しく説明。介護報酬が抑制されているなかで、経営体力の弱い事業所への影響も深刻とした。

 具体的には、利用者が減って減収となった3月、4月分の介護報酬の支払いはそれぞれ翌々月になるため「経営危機が表面化するのはこれからだ」と指摘。倒産や撤退が相次げば、介護サービス基盤が崩れて介護難民が出る状況が懸念される。また、ヘルパーなどが職を失い、ただでさえ不足している介護職の状況を悪化させる恐れがある。

 介護崩壊を防ぐには事業所への経営支援や、介護報酬上のインセンティブが必要と指摘。「市町村の介護保険財政はおおむね黒字。自助努力で防げない減収は支援が必要」と強調した。また、状況が悪化しかねない在宅の要介護者には民生委員や近所の手助けなどのアウトリーチが欠かせないとした。地域の力が不可欠な「地域包括ケア」は今回のような有事を想定しておらず、見直しが必要だと指摘した。


ゲスト / Guest

  • 高野龍昭 / Tatsuaki Takano

    日本 / Japan

    東洋大学准教授 / Associate Professor, Toyo University

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:16

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