2020年04月01日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「新型コロナウイルス」(6) 感染症施策と報道 武田徹・専修大学教授

会見メモ

武田徹氏がハンセン病隔離医療の問題点を踏まえ、現在の新型コロナウイルス感染症対策やソーシャルディスタンシング(社会的隔離対策)について話した。

武田氏は社会学、メディア論が専門で『「隔離」という病い』(中央公論新社2005年)『日本ノンフィクション史』(中央公論新社2017年)などの著書がある。

司会 磯崎由美 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

 

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会見リポート

ハンセン病隔離政策の教訓

青島 顕 (毎日新聞社社会部多摩総局長)

 直面する感染症をどう捉え、いかに報道すべきなのか。武田さんはハンセン病の歴史に学び、考えることを提案した。

 感染力の低いハンセン病に対し、特効薬が発明された後も続けられた強制収容と終身隔離は、現代から見ると人権侵害そのものだ。しかし当時の視点に立てば、ゼロにできない感染リスクを絶つために取られた行動だったとも捉えられる。

 『いのちの初夜』を書いたハンセン病患者の作家、北条民雄を迎えた編集者、式場俊三の行動を取り上げた。式場は北条を下宿に泊めたが、翌日布団を焼き捨てた。泊めても感染の可能性は低いと判断したが、それでも「ゼロではない」とみてリスクを最小化させたと武田さんは推測。この発想に学ぶところがあるとした。

 当時は①強制隔離を採った政府②そう主張する専門医の声だけを取り上げて恐怖のイメージを増幅させた報道③偏見を広げた市民社会――いずれもが間違えたと指摘。誤りを知ったら修正して進むのが報道の役割だと呼び掛けた。

 新型コロナなどの感染症対策について、一次感染者の隔離でしか二次感染を防げない場合に隔離は正当化できるが、一次感染者を差別から救い、生活の質の向上と人権侵害への補償が必要だと分析した。また、自粛が機能するには、人々の自発性が前提だと主張。現状は政府・行政の要請が受け入れられている半面、非協力者への攻撃も起き、社会の分断が危惧されるとして「非協力者にはその人たちなりの行動根拠がある。村八分にせず、気持ちを踏まえて協力してもらう組み立てが必要だ」と訴えた。現状は民主主義が脆弱な状態だとして、感染症への取り組みを教育で扱うことも求めた。

 改正新型インフルエンザ等対策特別措置法については、NHKに対して政府が放送内容の「総合調整」「指示」ができる項目について、報道機関が問題意識を持つべきだと訴えた。


ゲスト / Guest

  • 武田徹 / Toru Takeda

    日本 / Japan

    専修大学教授/ジャーナリスト / professor, Senshu University / journalist

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:6

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