2020年03月26日 17:00 〜 18:30 10階ホール
「シリーズ人生100年」(2) 70歳雇用で職場と賃金はどう変わるか 今野浩一郎・学習院大学名誉教授

会見メモ

政府の「全世代型社会保障検討会議」は夏までに最終報告をまとめる予定としている。「シリーズ人生100年」では今後の社会保障制度改革では何を議論すべきなのか、まだ議論されていないことは何か、各分野の専門家に問題を提起してもらう。

全世代型社会保障改革の「雇用」分野では、70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする法改正が今年度中に可決される見込みとなっている。

 

シリーズ2回目は、この「70歳雇用」が職場や賃金にもたらす変化について、著書に『高齢社員の人事管理』(中央経済社、2014年)などがあり、雇用や人材に関わる分野を研究する今野浩一郎・学習院大学名誉教授に聞いた。

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

「置いてやる」雇用の見直しを

板垣 哲也 (朝日新聞社論説委員)

 人口減少と少子高齢社会を乗り切るために、高齢者にもなるべく働き手になってもらう。そんな考えのもと、政府は希望する人が70歳まで働ける社会への転換を掲げる。

 政府の思い描くようにうまくいくのか。70歳雇用の時代に向けて社会はどう変わるのか。

 人事管理研究の第一人者の今野浩一郎・学習院大学名誉教授がまず語ったのは、「どういう雇用の質かが問題。ただ雇われていればいいというのではない」ということ。70歳まで雇用を広げることを急ぐより、まず65歳までの雇用にきちんと対応することが重要だという指摘だ。

 では、今の高齢者雇用の現状はどうか。多くの企業は60歳定年後に契約社員などで再雇用する手法をとる。仕事の内容、がんばりに関わりなく賃金も一律に引き下げられるのが一般的だ。

 そんな手法を、今野氏は「置いてやる」という発想の雇用、「福祉的雇用」と呼ぶ。

 「置いてやる」と扱われた社員の振る舞いは「じゃあ居てやる」となる。これでは生産性も落ちるばかり。シニア社員の特性に応じた処遇、活用する視点が企業に求められる、という指摘は説得的だ。

 そうした仕組み作りに必要な視点として、今野氏が挙げたのが二つ。業務上必要とされる人材とシニア社員をマッチングする工夫と、仕事に見合った、合理的な説明のできる賃金制度の構築だ。

 一方、変革を迫られているのは企業だけではない。働く側も、自分に何ができるか、何を「売り」にするのかを意識したキャリアビジョンの形成が必要、という。

 「職業生活の長期化で、上り続けるキャリアはあり得ない」、と今野氏は強調する。役割に即した人間関係構築力、気持ちの切り替えが大切という指摘に、私たち一人一人も向き合わねばならない。


ゲスト / Guest

  • 今野浩一郎 / Koichiro Imano

    日本 / Japan

    学習院大学名誉教授 / Emeritus Professor, Gakushuin University

研究テーマ:シリーズ人生100年

研究会回数:2

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