2020年02月23日 17:00 〜 18:00 10階ホール
アカデミー賞受賞の映画「パラサイト」 ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホさん 会見

会見メモ

第92回アカデミー賞で作品賞など4つの賞を獲得した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホさんが、受賞後初めて来日し、会見に臨んだ。ポン監督は受賞の喜びを語るとともに、作品の狙いについて「韓国だけでなく、全世界のさまざまな国で二極化がある。私は二極化の事実を暴きたかったというよりも、いまこの時代に生きている人々すべてが感じている不安や恐れを、率直に表現してみたかった」と述べた。ソン氏は、韓国と日本の映画の交流が少なくなってしまった点を憂慮し、「お互いの国の作品に関心を持ち、互いに声援し合える2000年代初めの頃が戻ってきてほしい」と語った。

 

司会 小栗泉 日本記者クラブ企画委員(日本テレビ)

通訳 延智美(ヨン・ジミ)

             朴美淑(パク・ミスク)

 

公式サイト


会見リポート

「不安や恐れを表現したかった」

立花 珠樹 (共同通信社編集委員)

 アカデミー賞は、本来ハリウッドのお祭りだ。その最高賞ともいえる作品賞を韓国映画が受賞したのだから、すごい。アジア映画としては初、英語以外の言語の映画が作品賞を受賞したのも初めて。まさに歴史を変えた快挙だった。

 もっとも、個人的にはポン・ジュノ監督(右)の傑作は、ソン・ガンホさん(左)との初コンビだった2003年の『殺人の追憶』と今でも思っている。それほど優れた作品を撮り続けてきた実力のある監督なのだ。

 『パラサイト』の製作意図について問われると「格差社会、二極化、世界中で同じような問題があるが、それを暴きたかったわけではない。このままでは未来はどうなるのかという、全ての人が抱えている不安や恐れを率直に表現したかった」と誠実に答える姿勢が印象的だった。

 主演俳優のソン・ガンホさんは冒頭のあいさつで、こう切り出した。

 「日本と韓国は近い国なのに、交流が薄まっている。『パラサイト』をきっかけに、2000年代初期のような状態が戻ってきてほしい」

 2000年に日本で公開された『シュリ』や翌年の『JSA』は大ヒットした。ソン・ガンホさんも出ていたこの2作品で、韓国映画のファンになった人も大勢いたはずだ。だが、その後のぎくしゃくした日韓関係が、映画の世界にも影を落とした。

 この20年、着実に力を付け、世界の最高峰に到達するまでになった韓国映画が、日本でそれほど知られていないのは残念なことだ。

 会見が開かれたのは、新型コロナウイルスの感染が日韓両国で拡大するさなかだった。そのため、ソン・ガンホさんが演じる主人公が怪物に襲われ、ウイルス感染を疑われて政府から追われる『グエムル―漢江の怪物―』(2006年)との類似点や、現状への意見を聞く質問も出た。

 「(ウイルスを)恐れ過ぎ、過度に反応して、国家的、人種的な偏見が生まれれば、もっと怖いことが起きてしまう」。監督の危惧が現実のものにならないことを祈りたい。

 全体を通して、ユーモアと気配りが感じられ、監督と主演俳優が深い信頼で結ばれているのがよく伝わってくる会見だった。監督は照れながら目標も明かしてくれた。「『七人の侍』やヒッチコックの『めまい』や『下女』のような、時間を超えて生きるクラシックを作りたい」

 ポン・ジュノ監督が挙げた韓国映画の傑作、キム・ギヨン監督『下女』(1960年)をどれほどの日本人が見ているだろうか。私たちは、隣国の文化をあまりにも知らないのではないか。そんな思いが残った。


ゲスト / Guest

  • ポン・ジュノ / Bong Joon-Ho 봉준호

    韓国 / Korea

    映画監督 / movie director

  • ソン・ガンホ / Song Kang-Ho 송강호

    韓国 / Korea

    俳優 / actor

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