2020年02月19日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「プーチンのロシア」(1) 畔蒜泰助・笹川平和財団シニア・リサーチ・フェロー

会見メモ

プーチン氏は2000年の大統領就任から20年、ロシアのトップを続けている。プーチン氏がもたらした変化や今後のロシアについて、シリーズで聞く。

第1回は、ロシア政治に詳しく、2017年1月から昨年9月まで国際協力銀行(JBIC)モスクワ駐在員事務所の上席駐在員を務めた畔蒜泰助氏に聞いた。

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

「謎多きプーチン」を読み解く

安間 英夫 (NHK解説委員)

 「プーチンは謎多き人物」。畔蒜氏が監修して出版された米国の研究者フィオナ・ヒル氏ら2人の『プーチンの世界』の前書きに書かれている言葉だ。

 プーチン氏はことし1月、2024年の任期満了を見据えて憲法を改正する考えを電撃的に発表した。プーチン氏自ら世界の研究者と意見を交わすバルダイ会議に参加してきた畔蒜氏がどう謎を読み解くのか、興味を引かないはずはない。

 畔蒜氏は、大統領就任前に発表された論文にさかのぼってプーチン氏の世界観を説き起こし、時期を追って国際政治のトレンドと照らし合わせながら治世を考察して、この20年間の業績と課題をそれぞれ2つに凝縮して分析した。業績は「国家の統一性の維持」、「真の国家主権の回復/世界政治における大国(a great power)としての地位の回復」の2つを挙げ、残された2つの課題については「持続的な経済成長の実現」、「2024年を見据えた『ポスト・プーチン』体制への移行準備」と指摘した。

 ポスト・プーチンをどう見るのか。畔蒜氏は「恐らく若い行政経験のあるプーチンと非常に近い治安系、知事などプーチンの意向に沿った人間。その人間がプーチンのテストに受からない場合、メドベージェフ(前大統領・前首相)、ソビャニン(モスクワ市長)の可能性もゼロではない」という見方を示した。

 さらに憲法改正で領土を割譲することを禁止する条項が検討されていることについて、ロシアは、領土問題の解決を伴う平和条約の締結が日本の関心をロシアに向ける最大のツールと考えているとして、「その可能性を遮断する憲法改正は100パーセントしない」と断言した。

 果たして結果はどう出るのか。冒頭の本にはこう書かれている。「“予測不可能な”プーチンをより予測可能にすることが私たちアナリストの務め」。同じ気概を畔蒜氏に感じた。


ゲスト / Guest

  • 畔蒜泰助 / Taisuke Abiru

    日本 / Japan

    笹川平和財団シニア・リサーチ・フェロー / Senior Research Fellow, The Sasakawa Peace Foundation

研究テーマ:プーチンのロシア

研究会回数:1

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