2019年12月11日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「ベルリンの壁崩壊がもたらしたもの」(3) 冷戦終結30年 大分岐の時代に 斎藤幸平・大阪市立大学准教授

会見メモ

斎藤幸平・大阪市立大学准教授が登壇し、冷戦終結以降の経済システムの変化や、これからの社会・経済のあり方について語った。

斎藤准教授は1987年生まれ。米国の大学で学んだ後、独フンボルト大学哲学科で博士号を取得した。

マルクス理論から環境問題を論じた著作で2018年にマルクス研究界最高峰の賞「ドイッチャー記念賞」を史上最年少で受賞した(邦訳増補改訂版は『大洪水の前に―マルクスと惑星の物質代謝』2019年4月、堀之内出版)。 日本人の同賞受賞は初めて。

哲学者マルクス・ガブリエル氏らとの対話を収めた編著書『未来への大分岐』(2019年8月、集英社新書)では、資本主義システムの行き詰まりを指摘し、新たな社会の展望を探っている。

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

二十一世紀型の「エコ社会主義」訴える

真田 正明 (朝日新聞社論説委員)

 1987年生まれというから、物心ついたころには東独もソ連も地上から消えていた。その人がいまマルクスの資本論の再評価を唱える。

 資本主義が「勝利」して30年。見えてきたものは何か。格差と貧困、気候変動、シンギュラリティー……絶えざる経済成長があらゆる人を豊かにするという神話の崩壊だ。だから今こそ「大分岐の時代」で、資本主義からの決別の時と言う。

 中でも注目するのは気候変動である。市場メカニズムのもとで二酸化炭素削減を図るパリ協定はまったく不十分。気温が2度上昇するだけで、熱波や洪水のリスクは飛躍的に高まり、サンゴは99%減少する。農業や漁業への影響も著しい。

 新自由主義のもとで貴重な時間を無駄にしてきた。残された時間で、あらゆる手段を使わないと取り返しがつかない。二酸化炭素の多くを排出している先進国の富裕層は、その帰結に直面することなく世を去り、一番影響を受けるのはほとんど排出していない下から半分の人々だ。さらに将来世代は、自分たちの排出していない二酸化炭素によって生活を脅かされる。

 斎藤氏はこの構造をマルクス的な「階級闘争」ととらえる。「環境プロレタリアート」が資本主義と対峙し、システムを変えなければ対処は不可能と言う。それは「エコ社会主義」であり、国家資本主義ともいえるかつてのソ連型社会主義とは別のものだ。

 米国で「社会主義者」を名乗るサンダース上院議員が若者の支持を得ているという。彼らが唱えるグリーン・ニューディールが、脱経済成長のエコ社会主義へ移行する手段になりうるとみる。

 米誌タイムは「今年の人」に環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(16)を選んだ。彼女の訴えは多くの点で斎藤氏の主張と重なる。既存の社会を揺り動かす若者たちが出てきた。


ゲスト / Guest

  • 斎藤幸平 / Kohei Saito

    日本 / Japan

    大阪市立大学准教授 / Associate Professor, Osaka City University

研究テーマ:ベルリンの壁崩壊がもたらしたもの

研究会回数:3

ページのTOPへ