2019年11月12日 13:30 〜 15:00 9階会見場
著者と語る『2050年のメディア』下山進・慶応義塾大学総合政策学部特別招聘教授

会見メモ

『2050年のメディア』(文藝春秋)は、読売、日経、ヤフーの戦略を丹念に追い、インターネットがもたらした世界の地殻変動を分析、メディアの将来像を描いたノンフィクション。

執筆のきっかけや取材のエピソードを交え、これからのメディアが取り組むべき課題を示した。

司会 倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

メディアの地殻変動をたどる

谷 定文 (ニッポンドットコム常務理事編集局長 時事通信出身)

 「紙の部数後退は、はっきりしている」「5年で経営を維持できなくなる可能性がある」

 こう言われて心がざわつかない新聞人はいない。会見場には不快感が漂っていたような気がする。

 下山氏の発言には根拠がある。インターネットが普及し始めた1990年代にも新聞業界に危機感はあったが、部数を大きく減らすことはなかった。それが現実となったのは、2008年にiPhoneが発売されてからのこと。スマホで情報を持ち歩けるようになったのだ。

 現在、通勤電車で新聞を広げているのは希少人種で、多くは画面をのぞいている。下山氏は本書で、この変化を「紙の新聞への弔鐘をつげる風景でもあった」と切り取っている。

 本書は、この20年間にメディアに起きた地殻変動を読売新聞、日本経済新聞、ヤフーの3社を軸に描いた作品だ。経営戦略がどう変遷したのか、人間模様を織り込みつつストーリーを展開する。清武の乱や日本新聞協会のパワハラ問題といった「脱線」も、下山作品の魅力だ。

 彼のキャリアの出発点は週刊誌記者。記者クラブに属さず、情報へのアクセスが遠いだけに、取材力では負けない、と自負する。今回も、大手メディアの経営者から販売店主まで多数のインタビューをこなし、彼ら彼女らの苦悩に寄り添った。

 だから、大手メディアが外部からの取材に門戸を狭めている現状にいら立ちを隠さない。会見では、山口寿一読売新聞グループ本社社長が取材に応じたことに触れ、「読売にとって有利な本ではないと分かっていながらジャーナリズムの基本を忘れない企業だった」と評した。そうでない社への皮肉と受け止めた。

 下山氏の真骨頂は、しつこい取材だ。彼が言うように、紙からデジタルに移っていくのだろう。しかし、どのような時代になっても、「会う・聞く・書く」を通じて事実を掘り起こす健全なジャーナリズムは生き残る。彼のような記者がいる限り。


ゲスト / Guest

  • 下山進 / Susumu Shimoyama

    日本 / Japan

    慶応義塾大学総合政策学部特別招聘教授 / Guest Professor, Faculty of Policy Management, Keio University

研究テーマ:2050年のメディア

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