会見リポート
2019年10月25日
13:00 〜 14:30
10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(35) 朝鮮人強制連行の実態 外村大・東京大学大学院教授
会見メモ
現在の日韓対立は韓国大法院の徴用工への賠償判決がきっかけだった。『朝鮮人強制連行』(岩波新書2012年)などの著書がある外村大教授が登壇し、そもそも朝鮮人の強制連行の実態はどのようなものだったのか、どのような事実が確認されているのかについて語った。
司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
会見リポート
植民地主義の克服が課題
出石 直 (NHK解説委員)
「強制連行はなかった」
「過酷な労働は強いていない」
日本国内では朝鮮人の強制連行を疑問視する声も少なくない。
外村教授は、当時の公文書や統計資料、当事者の証言などを丹念に読み解くことによってその実態に迫り「広範に強制的、暴力的な動員があったことは否定できない」と結論づけている。
朝鮮人労働者の日本内地への動員は、1939年9月以降は動員計画に基づく「募集」によって、1942年2月以降は朝鮮総督府の要綱に基づく「官斡旋」によって行われた。朝鮮で国民徴用令が発動されたのは1944年の9月以降だが、動員先が政府管理の軍需工場に指定されたことで徴用とみなされたケースもあった。こうした複雑な経緯が、様々な誤解を生む原因になっていると、外村教授は指摘する。
朝鮮人労働者は、炭鉱や土木工事建設現場、港湾荷役など労働環境が劣悪で日本人が忌避する職場に動員されることが多かった。援護施策が十分に機能していなかったために、賃金や手当の未払いや私的制裁など差別的な待遇を強いられた。戦争末期には労務供給が需要に追いつかず、本人の意思に反した“拉致同様”の動員があったという記録が、当時の公文書にも記載されているという。
「法令に基づいた徴用だったかどうかや強制だったかどうかが問題ではない。朝鮮の人達の自己決定権を奪って動員したという実態を認めて反省し、植民地主義を克服することが課題だ」と結んだ。
史料に基づいて史実を明らかにしていく歴史研究者としての誠実な姿勢には共感した。ただそうした史実を各個人や企業、政府がどう受け止め、どのような行動を取っていくのかは、また別の次元の問題だろう。日韓関係の打開策について、もう少し踏み込んだ発言が聞きたかった。
ゲスト / Guest
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外村大 / Masaru Tonomura
東京大学大学院総合文化研究科教授 / professor, Graduate School of Arts and Sciences, Tokyo University
研究テーマ:朝鮮半島の今を知る
研究会回数:35