2019年08月02日 13:00 〜 14:30 10階ホール
著者と語る『会計と犯罪 郵便不正から日産ゴーン事件まで』 細野祐二氏

会見メモ

細野氏は、公認会計士として関わった企業の株価操縦事件(キャッツ粉飾決算刑事事件)で有罪となった。その後、自身の事件や厚労省・村木厚子局長の冤罪を生んだ郵便不正事件など多くの事例を研究してきた。著書『会計と犯罪 郵便不正から日産ゴーン事件まで』執筆の経緯や、経済事件における検察の捜査手法、裁判の問題点について話した。

 

司会 福本容子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

細野氏ホームページ

『会計と犯罪 郵便不正から日産ゴーン事件まで』(岩波書店)

 


会見リポート

「復讐するは我にあり」

安井 孝之 (朝日新聞出身)

 著者の細野祐二さんは「伝説の会計士」といわれる会計のプロである。害虫駆除会社キャッツの粉飾決算事件(2004年)で無罪を主張したものの、有罪判決を受け、公認会計士登録を抹消された。その後は会計のプロとして活動し、今も経済事件を取材する多くのジャーナリストに知恵を授ける存在でもある。

 書名は『会計と犯罪』だが、半分以上のページは元厚労事務次官の村木厚子さんが無罪となった郵便不正事件について割かれた。村木さんの無罪こそが、細野さんにこの本を書かせた理由だったのだ。

 「無罪になった村木さんは『運が良かった』と話されましたが、有罪になった私は『運が悪かった』と思うわけにはいかないじゃないですか」

 こう語った時の言葉には無念さと怒気が入り交じっていたように思う。「復讐するは我にあり」と揮毫した細野さんだ。運、不運で裁判が左右されてはたまらない。日本の司法制度のおかしな状況を謎解くためにこの本を書いたのだという。

 「人質司法」の象徴である長期勾留問題や客観証拠や公判での証言よりも検面調書(検察官面前調書)が重視されがちな問題点を指摘し、「捜査と起訴を併有する特捜部の内部統制は機能しない」と断言する。同じ組織で捜査、逮捕、起訴を行うのだから自分たちの都合の良い証拠集めやストーリーを作り上げてしまう懸念が生じるからだ。

 経済事件の犯罪構成要件として故意かどうかがよく争われるが、細野さんは「犯罪事実も争うべきだ」と言う。検察のストーリーは会計のプロから見れば無理筋の論理が多いようだ。「経済司法には複式簿記が導入されておらず、単式簿記のまま」と手厳しい。

 本の編集が最終段階に入ったころ日産ゴーン事件が発覚した。その問題点を書き加えた。メディアが伝える検察情報に基づく記事とは大いに異なる見方、分析が興味を引く。


ゲスト / Guest

  • 細野祐二 / Yuji Hosono

    会計評論家

研究テーマ:『会計と犯罪 郵便不正から日産ゴーン事件まで』

研究会回数:0

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