2019年04月22日 15:30 〜 16:30 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(26) 徴用工賠償請求の論理 崔鳳泰・元徴用工訴訟原告代理人

会見メモ

20年以上にわたり原告団の中心的役割を担ってきた崔鳳泰弁護士が会見した。

「日本政府は日韓請求権協定に基づく政府間協議を申し入れている。これは千載一遇のチャンス。残された問題を解決して欲しい。日本のメディアも関心を持って欲しい」と訴え、政府間協議が実現するならば強制執行をとめるよう被害者を説得したい、との考えも示した。

 

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

「元徴用工は人権問題」

塩入 雄一郎 (西日本新聞社東京支社報道部)

 1965年の国交正常化以来、「最悪」と言われる現在の日韓関係。その要因の一つ、元徴用工訴訟の原告代理人を務めている崔鳳泰弁護士は「政治、外交問題としてとらえるから、複雑な状況に陥っている」と訴えた。

 崔氏は韓国・大邱市の弁護士。元徴用工の損害賠償請求訴訟には2000年から携わっている。きっかけは、日本の弁護士からの依頼。「日本の弁護士や市民が熱心に被害者の人権のために取り組んでいて、感銘を受けた。だから被害者に少しでも役に立ちたいと思った」という。

 元徴用工の個人請求権を認めた韓国の大法院(最高裁)の判決に対し日本政府は65年の日韓請求権協定で解決済みとの立場を主張。だが崔氏は請求権は残っていて、日本も認めているとしている。「日本政府は91年の条約局長などが『請求権は消滅していない』と国会答弁を繰り返してきた。日韓の裁判所の判断も一致している」

 被害者の救済が進まない背景に日韓両政府が司法の判断を軽視していることを挙げる。「両政府が被害者の声を聞けば、問題を解決しようと認識するはずだ。この問題は政治、外交問題ではない。人権問題なんです」

 大法院判決を受けて、原告側は日本企業の資産の差し押さえを実施しているが、崔氏は資産の売却には「残念」と否定的だ。協定に基づく政府間協議が実現するならば「協議の結果を見たい」として、協議継続中は被告企業の資産売却を留保する考えを示した。

 いまだに日韓が戦後の補償問題で揺れ動くのはなぜなのか。崔氏が指摘するのは65年協定の限界だ。「冷戦の時代に強いられた協定だからあいまいな部分がたくさんある。協定を尊重すべきだが、使命は果たしたと言える。問題のある部分は協議して解決した方がいい」と強調した。


ゲスト / Guest

  • 崔鳳泰 / Choi, Bongtae

    韓国元徴用工訴訟原告代理人、弁護士 / lawyer representing South Korean plaintiffs in wartime labor lawsuits

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:26

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