2019年06月06日 15:00 〜 16:00 9階会見場
ペッカ・オルパナ駐日フィンランド大使 会見

会見メモ

昨年9月に着任したペッカ・オルパナ駐日フィンランド大使が登壇。4月に行われたフィンランド議会選挙の結果や社会保障制度、対日関係について語った。会場には政府が妊婦に無料配布する育児パッケージ「マタニティボックス」が展示され関心を集めた。また会見後には大使との懇談の場も設けられ、シナモンロールがふるまわれた。

 

司会 竹田忠委員 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)

 


会見リポート

フィン人党躍進の背景に気候変動問題も

福島 良典 (毎日新聞社論説副委員長)

 欧州に吹き荒れるポピュリズム(大衆迎合主義)の嵐は北欧の高福祉国家フィンランドにも及んでいるのか――。そんな疑問を抱いて会見に足を運んだ。

 4月の議会選挙を経て、第1党の中道左派・社会民主党を中軸とする連立政権が発足した。だが、選挙では欧州連合(EU)懐疑派のポピュリズム政党・フィン人党が躍進し、1議席差で第2党になった。

 オルパナ大使は、フィン人党が事前予想以上に支持を広げた理由として、反移民、反EUの政治的立場に加え、今回の選挙で争点となった気候変動問題への対応を挙げた。

 「他党が気候変動対策を提唱する中、フィン人党は『対策で自動車が使えなくなる』など暮らしへの悪影響を懸念する市民の声を吸い上げた」。見落としがちな視点だ。

 フィンランドは国連の幸福度ランキングで2年連続トップ。その理由を大使は①機能する福祉制度②自然・環境と共生するライフスタイル③信頼を土台とする社会――に見る。

 福祉・労働政策の一環としてフィンランドでは最低所得保障「ベーシックインカム」の導入実験が実施された。現在、実験結果が精査されているが、何らかの形で将来の政策に反映される可能性が高いという。

 ポピュリズム政党は、格差拡大で高まる国民の不満を背景に「ベーシックインカムの導入」を掲げる場合が多い。フィンランドは不満解消のための「富の再配分」実験を先取りしていると言えるかもしれない。

 「ゆりかごから墓場まで」と形容される北欧の福祉制度。会見場には、フィンランド政府から妊婦に無料配布される育児用品詰め合わせ「育児パッケージ」も展示された。

 今年は、日本とフィンランドの外交関係樹立100周年。幸福度58位の日本には、首位国の取り組みに学ぶべき点が多そうだ。


ゲスト / Guest

  • ペッカ・オルパナ / Pekka Orpana

    フィンランド / Finland

    駐日大使 / Ambassador

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