2019年04月18日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「総選挙後のタイ」浅見靖仁・法政大学教授

会見メモ

軍政に有利な選挙制度で親軍政側が勝ったが、プラユット暫定首相への支持は少数だった。対立軸がタクシン氏への賛否から軍政の賛否に移り、国王の影響で軍の派閥争いが起き政権は不安定と予測。王室報道を遠慮する日本メディアには「思い切って報道を」と激励した。

 

司会 鶴原徹也 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

浅見靖仁教授(法政大学HP)


会見リポート

対立構造転換の兆し

高木 香奈 (毎日新聞社外信部)

 タイ政治研究の専門家である浅見靖仁法政大学教授の約1時間の話の後、司会者は「活弁を聞いているようで、血湧き肉躍った」と話した。民政復帰に向けた8年ぶりの総選挙が3月24日に実施されたタイの政治は、取材対象としてそんな興奮するような局面を迎えている。

 今に至るタイ政治の混乱の始まりは2001年のタクシン首相就任にさかのぼる。タクシン氏は農村振興や貧困対策に力を入れ、政治的に無視されてきた地方農村部に大票田を築いたが、伝統的エリート層の反発を招き、06年のクーデターで退陣した。翌07年と11年の総選挙はいずれも「タクシン派」と「反タクシン派」政党の争いとなり、タクシン派が圧勝した。

 浅見氏によると、今回の総選挙結果には、対立構造が「タクシン派」対「反タクシン派」から「反軍政」対「親軍政」へと転換する兆しが見えるという。有権者の反軍感情が広がる一方で、タクシン派の得票率は伸び悩んだ。新興勢力の新未来党は、汚職のイメージの強いタクシン氏とは一線を画し、軍政継続を望まない人々の支持を得て躍進した。

 選挙管理委員会による選挙結果確定はワチラロンコン国王の戴冠式後の5月9日の見込みとなる。続いて招集される国会では、会見時点ではプラユット氏が首相に再選され、親軍政政党を中心にした連立政権が誕生する可能性が高い。タクシン派の小政党も加えた連立政権誕生の可能性や、3月の総選挙が無効となる可能性もあると話す。

 タイはこれから「ピンチ(窮地)に陥る」と言う。1980年代から2000年代の政治混乱はプミポン前国王がいたからこそ収まった面があるが、現国王の行動は予想しにくく、大きなリスクになると指摘する。タブー視されがちな王室の話題を含めて「愛情を込めて見守り、勇気を持って報道してほしい」と力を込めていた。


ゲスト / Guest

  • 浅見靖仁 / Yasuhito Asami

    日本 / Japan

    法政大学法学部国際政治学科教授 / Professor, Hosei University

研究テーマ:総選挙後のタイ

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