会見リポート
2019年02月13日
15:00 〜 16:30
10階ホール
「トランプのアメリカ」(1) 一般教書演説からよむ19年のアメリカ政治 前嶋和弘・上智大学教授
会見メモ
会見リポート
内政停滞、外交で得点めざす
大内 佐紀 (読売新聞社調査研究本部主任研究員)
トランプ米大統領の2度目となる一般教書演説は、野党・民主党との対立のため当初の予定より1週間遅れ、米時間2月5日に実施された。前嶋教授はこれを「(2020年の)再選に向けたスタート宣言」と位置づけた。トランプ氏は、内政では好調な経済、外交では北朝鮮政策を最大の成果だと強調し、「停滞」ではなく、「偉大さ(グレートネス)」を選択するよう国民に迫った。
民主党も次期大統領選に向け始動しており、出馬宣言が相次いでいる。果たしてこの中に、トランプ氏を阻む人物はいるのか。前嶋教授は「2008年のオバマ前大統領のように、無名に近い存在から急成長できる人材がいるかどうかがカギだ」としながらも、まだ見通せないと話した。
トランプ氏の残りの任期では、内政面での「停滞」が予測される。民主党が昨秋の中間選挙で下院を制し、ねじれ議会が生じた。さらなる減税やメキシコ国境への「壁」建設、医療保険制度「オバマケア」の撤廃といったトランプ氏の目玉公約実現を阻止するべく、民主党は徹底抗戦の構えだ。トランプ氏が抱えるロシア疑惑を巡る動きもヤマ場を迎える。
となると、トランプ氏は比較的自由が効く外交でのポイント稼ぎに腐心するようになると前嶋教授はみる。北朝鮮との核・ミサイル交渉での安易な妥協や、シリアやアフガニスタンからの拙速な米軍撤退などが視野に入ろう。「トランプ氏としては、小出しに外交で成果を挙げ、できる大統領を有権者に印象づけたい」というわけだ。
「トランプ氏はいつ、どう動くかわからない。我々はシートベルトをきちんと締めて備えないと」ーー。冗談交じりに前嶋教授はこう、締めくくった。米国との貿易交渉を控え、また北朝鮮との交渉で置き去りにされかねない日本のみならず、この2年間、トランプ氏に振り回されてきた世界にとって笑うに笑えない警鐘だ。
ゲスト / Guest
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前嶋和弘 / Kazuhiro Maeshima
上智大学教授 / professor, Sophia University
研究テーマ:トランプのアメリカ
研究会回数:1