2019年02月15日 14:00 〜 15:15 10階ホール
深澤祐二・JR東日本社長 会見

会見メモ

JR東日本の深澤祐二社長が、昨年4月の就任後に策定したグループ経営ビジョン「変革2027」の取り組みや展望について話した。訪日外国人旅行者向けに、預かり金なしで有効期限つきのICカードを販売することも発表した。

司会 藤井一明 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

JR東日本


会見リポート

人口減少に危機感 「非運輸」の収益増めざす

藤井 一明 (企画委員 日本経済新聞社編集局経済部長)

 ラッシュ時の山手線や年末年始の新幹線の混雑からは想像しにくいが、人口の減少と経営環境の変化にJR東日本が抱く危機感は深い。東京圏の人口は2025年を境に縮む局面に入り、東北地方は2040年までに3割近くの減少が見込まれるという。在宅勤務をしやすくする働き方改革が進めば定期券は要らなくなるかもしれないし、自動運転の普及は鉄道への逆風になりかねない。

 深澤氏は昨年つくった中期のグループ経営ビジョンを紹介しながら、生活サービスと呼ぶ「非運輸」部門の収益を伸ばす方針を明確にした。品川など山手線の駅周辺を念頭に「駅づくりから街づくりに広げる開発をしっかりと進めていく」。駅ビルや駅ナカの整備でも成功例をさらに積み上げるという。

 1日1700万人の利用客からSuica(スイカ)などで得られる大量の情報にはビジネスのタネが詰まっている。「今はダイヤ改正や店舗作りへの活用にとどまっているが、これからスタートアップ、ベンチャーとの連携も含めて考えていく」と表明した。

 会見後の報道では羽田空港と都心を結ぶ新線の計画への注目度が高かった。一方で深澤氏が自ら言及した労働組合からの大量脱退の動きも強い印象を残した。昨年、JR東の最大労組で浮上したストの動きが不発に終わったことをきっかけに、労組からの脱退者が雪崩のように拡大。

 かつては8割近い加入率だったのに「今は7割ぐらいの社員が組合に入っていない」。深澤氏は非組合員の急増を踏まえ「社員によりきめ細かく説明し、意見を吸い上げる仕組みをしっかり作り上げることが重要だ」と強調した。

 ストを巡り激しい闘争を繰り返した旧国鉄の1987年の分割・民営化から30年以上が過ぎた。平成の終わりを待っていたかのような労組の変貌に、脱皮を目指し動き出したJR東の隠れた顔を見る思いがした。


ゲスト / Guest

  • 深澤祐二 / Yuji Fukasawa

    日本 / Japan

    東日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長 / President and CEO, East Japan Railway Company

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