2018年11月22日 15:00 〜 16:30 9階会見場
「日本の労働を誰が支えるのか」(1) 鈴木康友・浜松市長

会見メモ

外国人2万人以上が暮らし、「多文化共生」を掲げる浜松市の鈴木康友浜松市長が会見し、浜松市の現状と課題、入管法改正案についての考えを話した。

 

浜松市HP「市長の部屋」

第2次浜松市多文化共生都市ビジョン(2018年3月)

 

司会 倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

成功のカギは地域ぐるみの受け入れ態勢

杉山 聡 (ジャパンタイムズ報道部)

 外国人労働者受け入れ拡大を柱とした入管法改正案。会見で浜松市長の鈴木氏は法案に賛成するという考えを明らかにした上で、外国人労働者が地域で溶け込むためには国と自治体とで連携し、教育といった制度の充実と財政支援が重要だと語った。

 外国人技能実習制度などで日本はすでに多くの人材を海外から受け入れており、このまま「いびつな形」で受け入れを続けるよりも、法整備に着手した政府の「方針転換」を評価した。

 浜松市は外国人を30年以上前から受け入れてきた。日系人が多く住むブラジルから1980年代後半に出稼ぎ労働者として多数が来日。90年の法改正で在留資格の条件が緩和されると、外国人が人口に占める割合は増え始め、のちに「日本一、ブラジル人の多いまち」と知られるまでになった。市の在留資格者の半数は「永住者」だといい、日本は短期滞在者ではなく、もうすでに多数の移民を受け入れている現実を指摘した。

 なぜ浜松は国際化で牽引しているのか。鈴木氏は、外国人を地域ぐるみでサポートしようという高い意識と実行力の表れだとした。教育面で公立学校へバイリンガルの職員を配置したり、転入してきた子どもたちを就学させるサポートを行なったりと、孤立を防ぎ地域との関わりを持たす努力をした成果を強調。行政面では日本語以外で情報を発信し、文化交流を促進する組織や機会を多数設けた。

 しかし浜松市のような「多文化共生」を全面的に打ち出し、サポート体制が全国各地ですでにできあがっているとは言いがたい。例えば財政面で厳しい地方自治体に、余裕があるのか。言葉や文化、慣習の違いは地域社会に馴染むのを阻む要因として挙げられ、鈴木氏も市は対策を進める中で試行錯誤を繰り返したと認めた。

 会見の中で鈴木氏は受け入れ拡大反対派の論点の一つ、治安悪化の懸念に触れ、市は犯罪発生率が低い部類に所属するというデータを示し、「きちんと共生が進めば決して外国人は犯罪の温床にならない。治安が乱れることもない」と述べた。

 ではもし地域に溶け込めず孤立してしまったらどうすればいいのか。技能実習制度では劣悪な労働条件に耐えられず失踪した外国人も多くいる。外国人労働者を「便利な労働力」としてだけではなく、地域に慣れ親しみ、一緒になって発展を目指すという仕組みづくりは並大抵の作業ではない。

 行政の手腕と市民一人一人の心構えが試されている。


ゲスト / Guest

  • 鈴木康友

    浜松市長

研究テーマ:日本の労働を誰が支えるのか

研究会回数:1

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