2018年12月11日 13:30 〜 14:30 9階会見場
「メディアのいまを考える」永井愛・劇作家、演出家

会見メモ

永井愛さんは、主宰する二兎社の演劇「ザ・空気」「ザ・空気ver.2 誰も書いてはならぬ」で報道現場の問題をとりあげた。この2作を制作した背景や報道への期待を語った。

二兎社

司会 小栗泉 日本記者クラブ企画委員(日本テレビ)


会見リポート

報道現場を覆う「空気」を問う

鈴木 嘉一  (読売新聞出身)

 2017年に上演された二兎社公演「ザ・空気」は評判を呼び、チケット確保が大変だった。最終日にようやく観劇でき、身につまされた。

 ニュース番組の編集長(田中哲司)が、「報道の自由」をテーマとする特集を準備してきたキャスター(若村麻由美)と、経営陣に通じている元新聞社論説委員のアンカー(木場勝己)との間で板ばさみになる。局内外からの干渉や圧力に振り回され、迷走するテレビ報道の現場からは、萎縮や忖度、自己規制といった局内のムードにとどまらず、異論を排除し、同調圧力を強める社会全体の息苦しい風潮も浮かび上がってきた。

 「現政権下で『言論・表現の自由』が窮屈になってきたと感じ、その最前線にいるメディアの記者たちを通して、日本の言論・表現の風景を描きたかった。私は喜劇のつもりだったのに、お客は笑わず、『社会派ホラー』と呼ばれました」と笑わせた。

 演劇界を代表する劇作家の一人として、芸術祭大賞に輝いた「パパのデモクラシー」(1995年)、読売演劇大賞受賞作「こんにちは、母さん」(2001年)など受賞作は多い。樋口一葉や森鷗外を取り上げる一方、社会性の強い題材を喜劇調で描いてきただけに、報道現場の「空気」を問うのは必然的だったのだろう。

 続編の「ザ・空気ver.2 誰も書いてはならぬ」では国会記者会館を舞台にして、記者クラブ制度など大手新聞社の報道姿勢に切り込んだ。前作はNHKの番組改変問題をヒントにしたと明かすように、「笑うに笑えない喜劇」は鋭い問題意識と綿密な取材に裏打ちされている。

 「新聞を信じたいが、国民が本当に知りたい記事が出ているとは思えない。社論と違っても、記者個人の『言論の自由』を保障する仕組みが必要」との指摘は重い。話は管理教育や政府の文化政策への批判にも及び、「文化の価値は経済効果だけでは測れない」と反骨精神を示した。

 


ゲスト / Guest

  • 永井愛 / Ai Nagai

    日本 / Japan

    劇作家 / Playwright

研究テーマ:メディアのいまを考える

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