会見リポート
2018年11月20日
14:00 〜 15:30
9階会見場
「朝鮮半島の今を知る」(18) 寺田輝介・元駐韓国大使
会見メモ
2002年の小泉訪朝時に駐韓大使を務めていた寺田輝介氏が、2000~2003年の韓国勤務時代や朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)設立時のエピソードを中心に話した。
司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
会見リポート
「タクアンとキムチ」で和んだ日韓首脳会談
五味 洋治 (東京新聞論説委員)
寺田輝介・元韓国大使は2000年~2003年までソウルで勤務されている。お話はこの時の経験が中心だった。実は私も、この時期にソウルに駐在していたが、大半は初めて聞くものばかりだった。
赴任前の日本と韓国は、金大中大統領と小渕恵三首相の良好な人間関係が反映し、安定していた。日本語を話せる韓国の政治家も少なくなかった。
「私は、韓国と深い関係にある多くの人たちに背中を押されて赴任したのです」と、ユーモラスに語った。
しかし、その後日韓関係は徐々に厳しくなっていく。最初は2001年に起きた、歴史教科書問題だった。日本で検定に合格した教科書に、日本の植民地支配や中国侵略を美化しているとの批判が起きた。
金大中政権は任期後半になっており、対応せざるを得なくなっていた。寺田氏は8回も韓国の外相に呼ばれ、抗議を受けたという。
そして2001年10月、大使生活の山場がやってくる。小泉純一郎首相が訪韓することになったのだ。小泉首相は、靖国神社参拝を行い、韓国や中国で厳しく批判されていた。
金大中大統領との会談も、お互いが準備した紙を読み上げるような堅苦しい雰囲気で始まった。食事に移ったが「小泉首相が、不思議なことを言いだしたのです」(寺田氏)。
「私は漬け物が嫌いで、タクアンもキムチも全然食べないんですよ、大統領」。すると金大統領は「私は、タクアンもキムチも好きなんです」と返した。
そこから会話が弾み、冗談まで飛び出した。「訪韓は、実に見事な成果を挙げました」(寺田氏)と評価した。
いままた日韓関係が難しくなってきている。そんな中だけに寺田氏の経験に、大切な教訓を感じる。指導者同士に面識があり、気心が通じれば、たとえ問題が起きても深刻化させなくてもすむということだ。
できれば、安倍晋三首相と文在寅大統領が、こんな気軽な会話を交わす関係になってほしい。
ゲスト / Guest
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寺田輝介 / Terusuke Terada
元駐韓大使 / Former Ambassador to Korea
研究テーマ:朝鮮半島の今を知る
研究会回数:18