2018年11月05日 15:00 〜 16:30 10階ホール
著者と語る『日中平和友好条約交渉と鄧小平来日』 田島高志・元駐カナダ大使、元外務省中国課長

会見メモ

司会 坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

 

外交証言録 日中平和友好条約交渉と鄧小平来日』(岩波書店)

 

※1978年10月25日に日本記者クラブで行われた鄧小平・中国副首相の会見音声は、下記URLからご視聴可能です。

会見の内容を文字に起こした会見詳録も掲載しています。

https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/19237/report


会見リポート

40年前、覇権化を鄧氏警告/中国の歯止めとなるか

川瀬 憲司 (日本経済新聞社編集委員)

 文化大革命で荒廃した経済と社会を建て直すため、中国が改革開放策を打ち出してから12月で丸40年。世界第2位の経済大国に道を開いた一大方針転換の前触れは、それに先立つ10月の鄧小平副首相の訪日だ。

 鄧氏は自動車、鉄鋼、家電の工場視察や新幹線乗車などを通じ、世界最先端の技術を体感した。日本記者クラブの要請に応じ、中国の指導者として初めて「西側式」の記者会見を開くなど、中国は変わるという意志を世界に示した。

 その訪日の主目的は日中平和友好条約の批准書交換だった。条約はその後の日中関係の基礎をなし、両国の経済関係の発展にも寄与してきたが、40年を経て、中国が強くこだわった反覇権条項が新たな輝きを放っている。

 外務省中国課長として交渉の最前線に立っていた田島高志・元駐カナダ大使は11月5日の記者会見で、条約締結のため北京を訪れた園田直外相に対し、鄧氏は反覇権条項を必要とする4つの理由の1つとして「中国が強い国になったとしても、覇権主義を唱えないために入れておく」と語ったと明かした。鄧氏は中国が覇権を求めることがあれば「中国と世界の人民はそのような中国政府を打倒すべきだ」と話したという。

 鄧氏の言葉と、南シナ海などで目の当たりにする現実には大きなずれを感じる。田島氏も「最近の中国が経済力と軍事力の強化を背景にしばしば強硬な態度をとっている」とし、「国際社会が現在の中国に対して警戒心をかなり高めている状況に照らし、改めて注目される発言であった」と言う。

 今の中国は覇権国家かどうかについては「非常にすれすれのところまで行っている」にとどめた。ベテラン外交官の配慮を感じさせたが、「どうかすれすれの線を越えないようにして欲しい」とも訴えた。40年前に両国の知恵を結集してまとめ上げた条約の精神は、中国の現指導部の歯止めとなるのか。


ゲスト / Guest

  • 田島高志 / Takashi Tajima

    元駐カナダ大使、元外務省中国課長 / former ambassador to Canada / former director, china division, MOFA

研究テーマ:日中平和友好条約交渉と鄧小平来日

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